愛犬が多飲多尿の場合に注意すべき病気!多飲と多尿の基準は?

 

愛犬がやたらと水をがぶがぶとがぶ飲みするようになった場合、少し注意が必要です。

当然暑い日や運動後には、ワンちゃんの水を飲む量は増えます。

しかし特に理由もなく、愛犬の水を飲む量が今までと比較して増えたケースでは、やはり飼い主さんは違和感を覚えてしまうはずです。

愛犬が水をよく飲むようになり、同時にオシッコの量も多くなったという、多飲多尿(たいんたにょう)の状態が見られる場合、腎臓病や糖尿病などの病気のサインの可能性があります。

本来1日に犬が飲む水の量や、オシッコの量はほぼ決まっています。

この基準量を愛犬が上まってしまうケースでは、病気のリスクが高まります。

今回は、目安となるワンちゃんが1日に飲む水の量と、オシッコの基準量を紹介するとともに、愛犬が多飲多尿となった場合に注意すべき病気を紹介します。

 

犬の多飲多尿の目安は?

 

「犬の1日に飲む水の量」

犬の1日に飲む水の量は、ワンちゃんの体重に換算して求めます。

体重1kg当たりにつき100mlが目安となります。

このため、体重5kgの犬を例に例えれば、次のような計算で犬の1日に飲む水の量を求めます。

5kg×100ml=500ml

このような計算から、体重5kgの犬であれば、1日に飲む水の量はおよそ500mlとなるわけです。

したがって、体重5kgのワンちゃんの場合、1日に500ml以上の水を飲むようであれば、病気の疑いがあるといえます。

このため、最近愛犬の水を飲む量が、以前と比べて多くなったように感じるケースでは、一1度愛犬が1日に飲む水の量を、実際に測って確認するのがおすすめです。

 

「愛犬の飲水量のチェック方法」

1.水の量を測ったり、500mlのペットボトルを利用するなどして、愛犬のフードボウルに水を入れます。

2.愛犬が水を飲み干してフードボウルが空になった場合、再度同様の方法でフードボウルに水を足します。

3.1日(24時間)この行為を行い、残ったペットボトルの水の量を測ることで、簡単に愛犬が1日にどれだけ水を飲んだか計測できます。

 

「犬の1日のオシッコの量」

ワンちゃんが、1日にするオシッコの回数は、平均2~4回程度とされています。

したがって愛犬が、マーキングを除くとして、1日に5回以上のオシッコをする場合、多尿が疑われます。

犬の1日にするオシッコの量も、ワンちゃんの体重に換算して求めます。

体重1kg当たりにつき50mlが目安となります。

先ほどの1日に飲む水の量と同様の計算方法により、体重5kgの犬の場合であれば、5kg×50ml=250mlとなって、5kgの犬が1日するオシッコの目安が250nl程度と分かります。

愛犬の多尿を疑う場合、実際に愛犬のオシッコの量を測ってみるのが一番簡単で明白な確認方法となります。

 

「愛犬のオシッコのチェック方法」

室内のペットシーツに尿をする犬の場合であれば、愛犬がオシッコをした1日分のペットシーツの重さを測ることで、簡単におおよその尿量の計測ができてしまいます。

なお、外で排尿しているワンちゃんの場合、見た目の量での判断となります。

今までより、オシッコの時間が長い、染みの大きさなどが今までより大きくなっていないかチェックしてみましょう。

また、1日オムツを履かせて、オシッコの量を測るなどの方法も考えられます。

 

愛犬が多飲多尿となったケースでの主な注意すべき病気

 

「糖尿病」

ワンちゃんが、多飲多尿となったケースでの代表的な病気の一つが糖尿病です。

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの作用が低下して血糖値が上昇し、糖分を再吸収できないために尿に糖が出てしまう病気です。

血中の糖分濃度が上がり、血が粘っこくなることから喉の渇きが生じます。

このためワンちゃんは水をかぶ飲みして、オシッコも多くなる多飲多尿が起こってしまいます。

また、反対に血中の糖分を排出しようとして尿の排出量が増加し、尿の排出で失われた水分を補うために、自然と水をたくさん飲むことになり、多飲多尿が引き起こされるともされています。

このような理由から、糖尿病になると多飲多尿となるのです。

糖尿病は、7歳以上の高齢犬に発症しやすく、特に肥満気味のワンちゃんは要注意です。

また、避妊手術をしたメス犬に多く発症しやすいとも言われています。

症状が進行してしまうと、腎臓病や白内障、さらに糖尿病性網膜症などの合併症の危険性もあり、糖尿病性昏睡に陥ってしまうケースもあります。

 

「腎臓病(腎不全)」

腎臓病は、ろ過機能を担う「ネフロン」という細胞が壊れてしまい、その結果、尿や毒素を排出する腎臓の働きが正常に機能しなくなり、体中に毒素がまわってしまう病気です。

短期間で急速に腎臓の機能が低下する「急性腎不全」と、時間をかけて徐々に病状が進行する「慢性腎不全」があります。

犬が水をがぶ飲みする多飲多尿状態になるのは、無意識に尿毒素を薄めようとする結果だともされています。

急性腎不全は、初期症状に多飲多尿が見られるのが特徴であり、反対に症状が進行してしまうと、尿量が少なくなり、重症化すると尿がほとんど出なくなります。

急性腎不全の原因は、犬が食べてはいけないとされる成分を含む、ユリ科の植物やぶどうを食べた、または農薬などによる中毒症状が原因で起こるとされています。

慢性腎不全になると腎機能が低下してしまい、その結果、本来であれば腎臓で吸収されるはずの水分がそのまま尿として排出されてしまいます。

そのため、色の薄い尿が大量に排泄されることとなり、体から失われた水分を補なうために、ワンちゃんは大量の水を飲み、多飲多尿となってしまいます。

なお、慢性腎不全は高齢になるほど発症リスクが高く、リンやナトリウムの過剰摂取は病状を進行させる危険性があります。

腎臓は沈黙の臓器とも呼ばれるほど、初期症状が現れず、症状が出た時にはすでに進行してしまっているとされ、早期に病気を見つけることが非常に困難な病気とされています。

高齢犬がガブガブ水を飲んでいるようなケースでは、慢性腎不全を疑ってみると、比較的早く発見できる可能性があります。

 

「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」

副腎皮質機能亢進症は、副腎から分泌される「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」の過剰分泌が原因となる病気です。

このホルモンは、炎症を抑える働きや、その他にも代謝や免疫反応に関与しているため、このホルモンが過剰に分泌されることによって、身体の至る箇所でさまざま症状が現れます。

愛犬は、水をたくさん飲む以外にも、以下のような症状が起こってきます。

・食欲旺盛

・体重減少

・尿量

・頻尿

・筋肉量の低下

・お腹まわりが丸く膨らむ

・左右対称の脱毛

・筋肉が薄くなる

・皮膚が黒ずむ(色素沈着)

8~12歳くらいの高齢犬での発症が多く、進行すると糖尿病を起こしたりします。

 

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「子宮蓄膿症」

 

子宮蓄膿症は、高齢で避妊手術していないメス犬に多く起こる病気です。

原因は、子宮に細菌などの病原菌が侵入することで炎症を起こし、膿が溜まってしまう、メス犬特有の病気であり、このため避妊手術を行って、子宮を取り除いてしまったメス犬には起こりません。

症状として脱水になりやすいため、その結果多飲になりやすいとされています。

また、膿の毒素の影響から、腎臓が無制限に尿を生成するため多尿になってしまい、そのため多飲多尿の症状が出てしまいます。

その他にも以下のような症状が起こってきます。

・頻尿

・お腹がパンパンに膨れる

・元気や食欲がなくなる

・毛並みが悪くなる

・体重減少

・発熱

・嘔吐

・陰部からの出血や膿の分泌

 

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「尿崩症(にょうほうしょう)」

尿崩症は、脳から分泌される尿量を調整するための「抗利尿ホルモン」が分泌されないことと、腎臓の機能の低下から起こる病気です。

このため、体内にある水分が尿として大量に排出されるため、その失われた水分補給のために大量に水を飲み、またその水が大量に排出されるという「多飲多尿」の悪循環が引き起こされます。

尿崩症には、「下垂体性尿崩症」「腎性尿崩症」の2種類あります。

 

「下垂体性尿崩症」

下垂体性尿崩症は、犬での発生は非常に稀だとされますが、脳の外傷や炎症、腫瘍の影響などのために、脳下垂体から抗利尿ホルモンが十分に分泌されなくなって起こります。

抗利尿ホルモンの働きは、腎臓の水分吸収を促す作用のため、分泌量が低下して腎臓での水分吸収が満足に行われなくなります。

その結果、大量の水が尿として排出されてしまいます。

 

「腎性尿崩症」

腎性尿崩症は、抗利尿ホルモンは正常に分泌されている状態ですが、腎臓の機能自体が低下してしまうため、その結果水分が十分に吸収されず大量の尿が排出されてしまいます。

 

どちらも初期症状は、多飲多尿となりますが、慢性化すると脱水症状を起こしやすく、要注意です。

 

「アジソン病(副腎皮質機能低下症)」

アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎からの「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」分泌量が低下して、体力や筋力の低下、低血圧などの症状が起こってしまう病気です。

先ほど述べた、「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」とまったく反対の理由で起こる病気です。

アジソン病にも急性と慢性の2つのタイプがあります。

急性アジソン病の原因は、強いストレスとされています。

本来コルチゾールは、ストレスに対応するホルモンのため、犬が強いストレスを生じてしまうと分泌量が低下してしまうのです。

呼吸困難、意識障害などのショック状態が起こってしまうこともあり、注意が必要な病気です。

慢性のアジソン病になれば、多飲多尿の症状はもちろん、その他にも元気や食欲がなくなる、嘔吐、下痢、腹痛、体重の減少などいろいろな症状が見られます。

 

まとめ

 

犬の多飲多尿の症状は、実はさまざまな病気の初期症状によく見られる特徴といえます。

このため、愛犬に多飲多尿の症状が感じられたケースでは、早めに獣医師の診断を受けてみるのがおすすめです。

ケースによっては、早期発見が困難とされる肝臓病の発見に繋がったりするかもしれません。

そのためにも、ワンちゃんが1日に飲む水の量を把握しておくことも大切となります。

今回紹介した計算式で簡単に求められるため、自分の愛犬の1日に飲む水の量は把握しておきましょう。

目安量を知っておくことで、異常に気づくことが可能となります。

愛犬のウンチやオシッコの後片付けは、飼い主さんが毎日することになるため、必ずチェックする習慣を身につけておきましょう。

犬の排泄物は、健康のバロメーターとなりますよ。