犬のクッシング症候群の検査方法の種類と内容及び検査費

 

犬のクッシング症候群は、5歳以上のワンちゃんによく発症します。

初期症状は、息が荒くなったり、毛が薄くなったりしますが、見た目は食欲があり元気なため、なかなか病気だと飼い主さんが気づきにくいと言えます。

したがって、怪しい疑い症状が出た場合、一度早めに検査を受けてみるのがおすすめです。

今回はあなたの愛犬が、クッシング症候群なった時の検査や検査費について紹介します。

 

クッシング症候の検査

 

犬のクッシング症候群の検査は、複数の検査を組み合わせておこない、確定診断を下すのが特徴です。

主な検査を簡単に紹介します。

 

「ACTH刺激試験」

副腎のコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の数値を血液検査により測定する検査です。

まず採血し、その後合成ACTH製剤を筋肉注射または静脈注射します。

1~2時間経ったら再度採血し、1回目と2回目の血液のコルチゾールの量を調べます。

判断は、2回目のコルチゾールの濃度で行います。

犬が副腎腫瘍のケースでは、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されるため、コルチゾールは異常高値を示します。

また、犬が下垂体の腫瘍であった場合は、副腎が過形成を引き起こすために副腎皮質ホルモンが過剰分泌され、同様にコルチゾールは異常高値を示します。

反対に異常低値を示した場合は、医原性クッシング症候群の可能性が高まります。

コルチゾール値により、次のように診断を下します。

・6~18μg/dL=正常

・18~25μg/dL=グレーゾンと判断

・25μg/dL 以上=クッシング症候群

・6μg/dL 以下=医原性クッシング症候群

 

グレーゾーンの場合は、時間をおいて再検査したり、他の検査と組み合わせて確定診断を下します。

 

「低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)」

低用量デキサメタゾン抑制試験は、下垂体の機能を利用した検査方法となります。

最初に、デキサメタゾンと呼ばれるステロイド系の抗炎症薬を低用量(0.015mg/kg) 静脈内投与します。

デキサメタゾンの商品名はデカドロンであり、低用量の場合はデカドロン 1mg(2錠)を服用することも多いです。

8時間後に血液検査を行い、血中のコルチゾールの数値を測定します。

犬がクッシング症候群の場合、血液中に副腎皮質ホルモンが過剰増加しても、下垂体からのACTHの分泌量が低下しないため、コルチゾールの分泌量も低下しません。

この特徴により、8時間後の血中コルチゾール値で次のように診断を下します。

・1.4 μg/mL 未満=正常

・1.4 μg/mL 以上=クッシング症候群

なお、クッシング症候群の最終的な判定は、他の検査も踏まえて総合的に決定するのが通常です。

 

「高用量デキサメタゾン抑制試験(HDDST)」

高用量デキサメタゾン抑制試験は、副腎の機能を利用した検査方法となります。

今度はデキサメタゾンを高用量投与します。

デカドロンであれば、8mg(16錠)を内服します。

約4時間後と8時間後の2回血液検査でコルチゾールの数値を測定します。

下垂体の腫瘍の場合は、コルチゾールの値が低下します。

副腎腫瘍の場合は、コルチゾールの値は通常変化しません。

 

ただしこの2つのデキサメタゾン抑制試験は、例外や正確な判定ができないことがあります。

本来ワンちゃんが安静状態にしていることが必要な検査であり、神経質な子や臆病な子だと動き回ったりしてしまい、正確な判定ができないこともあります。

また、長時間の検査となるため、入院が必要で大掛かりとなってしまいます。

このため、犬のクッシング症候群の補助的な位置づけの検査として行うことが多いです。

 

「超音波検査」

超音波検査により、副腎の腫大の有無や形の変形、左右の大きさの違いなどを検査します。

これにより、クッシングの原因が下垂体依存性(PDH)か副腎腫瘍性(AT)かの鑑別を行います。

下垂体の腫瘍の場合、通常左右の副腎が腫大しますが変形は生じません。

副腎腫瘍の場合、左右どちらか一方の副腎のみが変形し腫大します。

また、腫瘍でない方の副腎は通常萎縮してしまい、描出困難となることがあります。

なお、超音波検査での診断が困難なケースでは、高容量デキサメタゾン抑制試験

(HDDST)と組み合わせて判定することもあります。

 

「画像診断(レントゲン・CT・MRI)」

超音波検査と同じくレントゲン・CT・MRIを使用して、副腎を同様に検査します。

また、内臓脂肪の増加、肝臓腫大、副腎腫大、気管(気管支)の石灰化、骨量減少などが認められれば要注意です。

なお画像診断の場合、犬に全身麻酔をかける必要があるため、クッシング症候群の検査の中では最も大掛かりなものとなります。

このため、簡単には行われず、他の検査で疑いが生じたケースでの最終検査といえます。

 

参考目安とする検査には、以下のようなものがあります。

 

「尿検査」

尿比重(尿の濃縮度合い)を調べます。

尿比重の低下が見られれば疑いが生じます。

また、蛋白尿が認められたり、膀胱炎(細菌感染)も多くまります。

 

「血液一般検査」

通常赤血球や好中球、単球が増加します。

また、好酸球やリンパ球は、反対に減少が認められることが多いです。

 

「血液生化学検査」

ALP(血清アルカリフォスターゼ)、ALT(肝臓)、コレステロールなどの値の上昇が認められます。

 

「血圧測定」

多くの場合、高血圧の傾向となります。

 

犬のクッシング症候群の診断は誤診も多く、このため正確に確定診断するためには、これら多くの検査が必要になります。

このため、時間も費用もかかります。

また、治療の多くが内科療法となり、PDHの場合であれば、数値を見ながら時間をかけて慎重に薬の投与量を決定していく必要があります。

そのため、複数回に及ぶACTH刺激検査や血液検査が必要になるケースも珍しくありません。

そうなれば、検査費用が気になりますね。

次に犬のクッシング症候群の検査費を紹介します。

 

犬のクッシング症候群の検査費用

 

犬のクッシング症候群の検査費は高額だとまずは認識してください。

クッシング症候群かどうかの判定がなかなか困難な病気のため、一度の検査で確認されないことも多く、いくつかの検査を組み合わせたり、場合によっては2、3日入院するようなケースも珍しくなく、どうしても費用がかさんでしまいます。

また、地域や病院によって値段の格差が生じますが、平均的な金額を紹介します。

ただし、実際にはかなりの差が生じるため、あくまで参考としてみてください。

 

「1回あたりの平均検査費用」

 

・診察:約1,500円

・血液検査(採血費用):5,000円~10,000円ほど

・尿検査:約3,000円

・レントゲン検査:約5,000円

・超音波検査:約5,000円

・CT検査:約30,000円

・MRI検査:約50,000万円

・入院費:3,000円~5,000円

 

犬のクッシング症候群の検査は、コルチゾール値を調べるために主に血液検査となります。

ホルモン量を計測する必要があるため、単純な血液検査よりは費用が高くなります。

このため、診断と血液検査と投薬を行った場合、1回で25,000円程度は最低必要となります。

これに少しホルモン系の検査が追加されてしまうと、1回で50,000円程度はかかってしまいます。

もしも手術が必要な場合は、10万円から15万円くらいの費用がかかってきます。

また、犬のクッシング症候群と確定すれば、投薬治療を行っていく必要が生じます。

これはその後一生投薬治療を行っていくこととなります。

投薬治療はホルモンの分泌を抑える作用があり、通常1錠平均で1,000円から1,500円もします。

このため、小型犬であれば月額約2万円程度、中型犬で約4万円、大型犬で約6万円の費用が必要となると覚悟しておきましょう。