犬の気管虚脱に使われる主な気管虚脱と気になる副作用!

 

犬の気管虚脱の特徴は、咳や呼吸困難を伴う苦しい症状が出る病気です。

そのため少しでも早く発見して、軽い症状のうちに治療してあげたい病気だといえます。

気管虚脱に対する内科療法による薬の投与は、あくまでも対処療法とされています。

このため完治は難しく、上手く一生付き合ていくものと位置づけされています。

ただし、外科療法による手術は、実際のところ対応可能な設備などを要する病院は限られ、費用も高額となり、このため現実的にはまずは内科療法が行われるのが一般的です。

今回は、犬の気管虚脱に使われる主な薬の効果と、気になる副作用について説明します。

 

犬の気管虚脱に使用される6つの薬

 

1.気管支拡張薬

愛犬の咳が気になって病院に行き、気管虚脱と診断が下り最初にだされることが多いのが、気管支拡張薬です。

効果は、気管の炎症を抑えて気管を広げ、空気を通りやすくして呼吸を楽にする薬です。

このため、喘息によく用いられる薬として馴染みがあります。

また、風邪で咳がひどく出て、気管が腫れている時などにもよく使われます。

いくつか種類がありますが、よくだされるのが次の2つです。

 

・テオドール

テオドールは「テオフェリン」が主成分となります。

効果は、気管支平滑筋に直接作用することで、気管支を拡張します。

体内物質(cAMP)は、気管支平滑筋を弛緩させる作用がありますが、PDEという酵素の働きによって、別の物質に変換されてしまいます。

このため、PDEの働きを阻害して、cAMPの濃度を高めことで、気管支を広げる作用をもたらす薬です。

ただし気管虚脱の場合、仮に気管支を広げたとしても、症状自体が気管の壁が柔らかくひしゃげてしまっているため、喘息などの咳の発作とは異なり、効果がはっきりと表れない場合もあります。

 

・β(ベータ)2刺激薬

気管支には、β2受容体というものがあり、交感神経が関与します。

β(ベータ)2刺激薬の働きは、交感神経を刺激して気管支を拡張することです。

 

「副作用」

主な副作用は、嘔吐、下痢、食欲不振、めまいなどです。

ただし注意が必要なケースが、他の病気のための薬や、サプリメントなどを飲ませていたりする場合です。

そのようなケースでは、時には血中濃度が高くなってしまい痙攣などが起こる場合があるため、注意が必要となります。

痙攣などの通常では起こらないはずの注意すべき症状が起こった場合には、直ぐに動物病院へ連絡して受診させましょう。

 

2.鎮咳薬

咳が起こる原因は、ウイルスなどの異物を感知することで、咳中枢からの指令により起こる生体内防御反応です。

このため鎮咳薬は、その咳中枢に作用して働きを抑えたり、気管支拡張作用により、咳や気道の閉塞を抑える薬です。

よく使われる種類には、リン酸コデイン、アストミン、クロフェドリンシロップなどがあります。

 

「副作用」

鎮咳薬の主な副作用は、嘔吐、下痢、食欲不振、発疹、眠気などです。

なお、リン酸コデインなどは、急に使用を止めてしまうとイライラする気分が生じ、麻薬性があるともされています。

 

3.抗炎症薬

抗炎症薬は、気管支の炎症を抑える作用が働くため、気管が炎症を起こし、息をしにくい場合などによく使用されます。

種類としては、ステロイド系と非ステロイド系があります。

なお、気管虚脱の場合よく使用されるのが、ステロイド系の抗炎症薬である副腎皮質ホルモン剤です。

抗炎症作用があり、コルチゾールで炎症を鎮め、気管を広げます。

主な薬には、プレドニゾロン、デキサメタゾンといったものがあります。

プレドニゾロンは、皮膚のかぶれの薬としてよく使用されるため、名前は馴染みがあるかもしれませんね。

なお、気管虚脱の咳に対して、一番効果的なのが抗炎症薬(ステロイド)といえます。

ただし、ステロイドを長期服用してしまうと、副作用の心配が生じてきます。

このため通常は、一時的な薬と限定され、症状が改善した際には少しずつ減量して中止していきます。

 

「副作用」

抗炎症薬の主な副作用は、食欲増進、喉の渇き、皮膚の感染症などです。

通常薬を服用すると、食欲が下がることが多いものですが、ステロイド系は逆に食欲増進を招いてしまうようです。

ステロイドは、愛犬の体内でも作られる副腎皮質ホルモンですが、長期の服用によっては、皮膚が弱くなったり、肥満や筋肉低下が起こり、さらに肝障害、十二指腸潰瘍などが起こってしまいます。

また、体内でステロイドを作る量が減ってしまう副腎皮質機能低下症と呼ばれるアジソン病などになることがあります。

しかしステロイドは有効な薬であり、きちんと使用方法や使用期間を守ることで、とても効果を発揮する薬です。

 

4.抗生物質

抗生物質は、気管支の細菌感染、感染予防などに使われます。

抗生物質は、その種類がかなり豊富に存在しますが、気管虚脱のワンちゃんに使われることが多いのは、セフィム系やペニシリン系の抗生物質です。

 

「副作用」

抗生物質の主な副作用は、下痢、腹痛、発疹などです。

抗生物質は色々な種類があるため、仮に愛犬の体質に合わない場合などは他の種類を使用できます。

ひどい下痢などを起こすような場合には、獣医師に相談して薬の変更をするのもおすすめです。

 

5.鎮静剤

鎮静剤はワンちゃんの症状が、重症の場合や急性、また咳の発作がひどい場合などに、興奮を抑え落ち着かせ、咳や呼吸を少しでも楽にするために使用します。

大脳辺縁系、ならびに視床と視床下部に作用することで、鎮静作用や精神安定作用をもたらします。

抗てんかん薬としても使用される薬ですが、強い鎮静作用が働くものは危険性も高く、体の小さい犬には、比較的緩やかな弱めの作用の鎮静剤が使われます。

よく使われる薬は、ジアゼパム、アセプロマジンなどです。

 

「副作用」

鎮静剤の主な副作用は、眠気、ふらつき、めまい、ふるえ、脱力感、嘔吐、血圧低下などです。

かなりいろんな副作用が出てしまいますが、ワンちゃんが呼吸困難に陥りそうなチアノーゼが出ている状態など、重症の場合に使う薬のため、副作用を心配しているところではありません。

 

6.軟骨再生薬

軟骨再生薬は、本来であれば関節炎の治療に使われる薬ですが、気管虚脱にも効果があるとされています。

気管虚脱のワンちゃんには、「カルトロフェン・ベット」という軟骨再生薬が有効とされ、

有効成分は、多糖類の一種であるポリ硫酸ペントサンナトリウムですが、何と80~90%のワンちゃんの気管虚脱への有効性あるとの報告があがっているそうです。

効果は、軟骨細胞の損失を引き起こすタンパク分解酵素の活性を阻害させます。

さらに、軟骨細胞のプロテオグリカン生合成を促進させる作用があります。

問題は、注射薬しかないことであり、このため自宅での使用とはいかず、通院にての治療

となります。

週に1回行い、通常4週連続での皮下注射となります。

 

「副作用」

カルトロフェンベットの主な副作用は、嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振などです。