犬の抗癌剤の特徴と主な種類!がんに効かない場合の理由

 

犬が癌にかかった際の治療薬である抗がん剤について、今回は特徴や種類を紹介します。

実は動物専用の抗がん剤は販売されておらず、人間用のものを用いているのです。

抗癌剤治療の場合、副作用が生じるなどいろいろメリット・デメリットがあります。

効果が生じにくい癌があるなどという話も聞きますね。

 

抗癌剤の特徴

 

抗がん剤の注意点といえる一番の特徴が、癌に侵されていない健康な状態で使用すると発癌する危険があることです。

このため抗がん剤は、必ず癌であることが明確に確定してから使用することとなります。

したがって、癌の疑い状態や予防としては絶対使用してはいけません。

抗がん剤は、癌細胞を攻撃して壊すような強い作用が働く薬のため、正常な細胞までもが巻き添いを食らって損傷してしまいます。

癌細胞の増殖を抑制するためには、細胞分裂を失敗させる必要があり、このためすごく体に負担がかかります。

だから副作用が高頻度で起こり、とても辛いものとなります。

また骨髄抑制の副作用がよく起こるとされています。

どうしても免疫力が低下するため、感染症にかかりやすい特徴が生じ、白血球や血小板が低下してしまいやすくなります。

肝機能の低下も起こりやすく、吐気、下痢などの症状がよく見られます。

また胃腸障害がよく起こってしまいます。

このように辛い症状が生じる抗がん剤ですが、簡単に癌を完治させることはなかなかできません。

最初の使用初めの段階では、効果が出やすいとされていますが、連用して継続使用することで、耐性が発現し出すために、どうしても効果が出にくくなるようです。

癌を無くすためにどんどん使用したいところですが、副作用が強い薬のため、使用量は犬の体力に合わせて基準設定されます。

また、抗がん剤にも各種の種類が存在し、一つの薬を使用すれば耐性が高まるため、メカニズムの違う抗がん剤を組み合わせて使用し、効果を高めるように工夫して治療を行っていきます。

 

「分子標的薬」

最近では、副作用が軽いとされる「分子標的薬」がメインとなり、使用頻度が高まってきています。

分子標的薬とは新しいタイプの抗がん剤であり、従来の抗がん剤とは違った抗腫瘍メカニズムを持っているのが特徴です。

従来の抗がん剤の特徴は、すべての細胞に対して攻撃していたことです。

これに対して分子標的薬は敵を絞り、腫瘍細胞などの実際に病気となった細胞のみに攻撃を加えます。

このため、癌に侵されていない正常細胞へのダメージが軽減され、その結果副作用も軽くてすむようになってきています。

 

抗がん剤が効かない理由

 

多くの癌が、抗がん剤では思ったほど簡単には治癒しません。

あれほど強い薬ながらも、なかなか効果が出にくい理由を簡単に説明します。

原因は、がん幹細胞の特徴によります。

抗がん剤による癌治療には、細胞分裂が大きくかかわってきます。

多くの抗がん剤が癌を破壊するために攻撃をしかけるタイミングが、細胞分裂したときなのです。

抗がん剤がよく反応して効果を最も発揮するのが、細胞分裂の瞬間のタイミングです。

通常癌細胞は、腫瘍の中で盛んに細胞分裂を繰り返すことで、どんどん大きく成長していきます。

ところが腫瘍中には、がん幹細胞というものが存在し、これが抗がん剤の影響をあまり受けずに効果が低くなってしまう原因なのです。

理由は、細胞分裂のペースが遅いためです。

詳細説明すると、がん幹細胞には増殖モードと冬眠モードがあります。

この冬眠モードは、まったく細胞分裂をしないため、抗がん剤がほとんど効きません。

また、がん幹細胞は、細胞内でグルタチオンという物質を作りだす働きがあります。

抗がん剤は、活性酸素の力を利用してがん細胞を攻撃するのですが、グルタチオンには活性酸素を除去する作用があるため、抗がん剤の攻撃力が弱まってしまうのです。

がん幹細胞にはとても高い環境適応力が備わっており、抗がん剤の作用にさえ順応してしまい、抗がん剤への耐性を生み出し効果を無力化してしまうのです。

がん幹細胞のこのような働きのため、なかなか抗がん剤が効かないのです。

 

代表的な抗がん剤

 

「ブリプラチン/ランダ-シスプラチン」

通常プラチナ系と呼ばれる抗がん剤であり、白金原子を含むのが特徴です。

分子サイズと極小なため、がん組織に到達しやすいとされ、細胞の増殖を強力に抑制する効果があります。

その反面、副作用も強烈であり、吐気や腎臓障害に注意が必要です。

副作用
・尿量が減っていないか

・浮腫みが出ていないか

・痒みが生じていないか

・食欲が低下していないか

・嘔吐していないか

・ふらついていないか

・呼吸が早くなっていないか

上記のような副作用に十分注意してください。

 

「パラプラチン-カルボプラチン」

こちらもプラチナ系製剤です。

カルボプラチンは、副作用の低減を図り腎臓毒性をかなり軽減しています。

そのため抗癌作用は低下していますが、嘔吐や食欲不振などはほとんど生じないようです。

 

「タキソール-パクリタキセル」

タキソールを細胞分裂に関わる細胞内の微小管に結合させることで、細胞の分裂・増殖を抑える薬です。

投与時には、危険な過敏反応が出るため、予防のために事前にステロイドや抗ヒスタミン剤を投与します。

人間に使用したケースでは、ほぼ100%脱毛してしまいます。

味覚障害が起こり、好きな食べ物が変化することがあります。

嘔吐や食欲不振にも注意してあげましょう。

 

「エンドキサン-シクロフォスファミド」

昔からよく使用された薬であり、悪性リンパ腫でよく使われます。

DNAに結合することで、細胞の分裂・増殖を抑制する効果があります。

骨髄抑制による感染症と出血性膀胱炎に注意が必要です。

 

「アドリアシン-ドキソルビシン」

悪性リンパ腫によく使われ、強い抗癌作用があります。

DNAの複製に必要な酵素の働きを阻害し、副作用の影響で心臓が障害されることがあるため要注意となります。

 

「オンコビン-ビンクリスチン」

細胞内の微小管の働きを阻害することで、細胞の分裂・増殖を抑えます。

悪性リンパ腫や白血病によく使われます。

副作用として神経障害が出やすいため、ふらつきが生じてうまく歩行できないことがあります。

 

「L-アスパラギナーゼ」

筋肉内投与するケースもありますが、通常は皮下投与する薬であり、製品名はロイナーゼです。

腫瘍細胞が増殖するために必要とする、アミノ酸の一種であるアスパラギンを分解することで、栄養不足にして死滅させる効果を狙っています。

比較的副作用が少ない薬とされえています、繰り返し投与を継続することで、アナフィラキシーを引き起こす恐れがあるため要注意です。

 

「CCNU」

経口投与します。

製品名はロムスチンです。

DNA合成阻害作用により、腫瘍細胞の増殖を抑制します。

以下の癌によく使用します。

・リンパ腫

・肥満細胞腫

・組織球疾患

・脳腫瘍

 

「メトトレキサート」

経口投与あるいは静脈投与します。

製品名はメソトレキセートで葉酸代謝拮抗剤です。

細胞内において、DNAとRNAの合成を助ける酵素の働きを妨げることで、がん細胞の増殖を抑えます。

 

「アクチノマイシン」

静脈投与します。

製品名はコスメゲン、ダクチノマイシンです。

DNAに結合することでRNAの合成を抑制し、がん細胞の増殖を阻止します。

投与時に血管周囲に漏れ出てしまったケースでは、重度の皮膚壊死を起こしてしまいます。

 

「メルファラン」

経口投与します。

製品名はアルケランです。

DNA合成阻害作用により、腫瘍細胞の増殖を抑制します。

MP療法と呼ばれる形質細胞腫でプレドニゾロンとともに使用されることがあります。

 

「シタラビン」

皮下投与あるいは静脈投与、くも膜下腔投与します。

製品名はキロサイドです。

アメリカでは最もよく使用される抗がん剤の1つとして有名です。

腫瘍細胞のDNA合成を抑制することで、増殖を抑えます。

 

「プレドニン-プレドニゾロン」

本来は、アレルギーや炎症を抑えるための薬として使われる、合成副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)であり、抗癌剤ではありません。

ただし、悪性リンパ腫の治療のために使用されることがあります。

免疫抑制作用が働くため、使用すれば感染症にかかりやすくなり注意が必要です。

また副作用として食欲増進作用が生じます。