緊急性が高い犬の胃捻転は放置すれば命取り!原因と症状と好発犬種

 

犬の胃捻転は食後に急に発生し、緊急性が高く、致死率の高い病気だけに、ぼやぼやしていると命にかかわります。

それだけに、飼い主さんは、しっかり犬の胃捻転の主な原因と症状を把握しておく必要があります。

また、うっかり気づかず放置して対応が遅れると、命取りになる病気だけに、時系列別の症状も紹介します。

それこそ、胃捻転発生後5~6時間も経過して、愛犬が動けなくなってから動物病院に連れていくようだと、50%の確率で死亡するといわれているほど恐ろしい病気です。

また、胃捻転を起こしやすい好発犬種を紹介するので、飼い主さんはぜひ把握しておきましょう。

 

犬の胃捻転とは

 

犬の胃捻転とは、なんらかの原因で胃が捻転してしまう病気です。

捻転した胃は周りの臓器を圧迫し、また、胃の内容物が発酵し、胃をパンパンに膨張させたりします。

この影響で、血液が循環しなくなってしまい、最悪死に至るケースもあります。

胃捻転は緊急性の高い病気のためある面時間勝負、そのため早く気づいて処置することが何より大切です。

 

犬の胃捻転の原因

 

犬の胃捻転の主な原因は次の通りです。

胃捻転の主な原因
・食後すぐに散歩などの運動する

・大食いする

・早食いする

・胃でガスが発生しやすい食べ物を摂取する

・胃で急激に膨らむ食べ物を摂取する

・水を一気に大量にがぶ飲みする

・ストレス

・遺伝

・加齢

・他の病気の影響

「食事」

胃捻転は胃の病気のため、食事の仕方や食べ物が大きく影響し原因となります。

食べ方として大食いや早食いはNG、胃捻転の原因に直結してしまいます。

大食いすれば大量に胃に食べ物が溜まり、消化が遅れ胃が膨らんでしまいます。

また早食いも同様に、一気に胃に食べ物が溜まってしまうし、空気を飲み込みやすいため、胃が膨らみやすく、胃捻転が発症しやすくなります。

食べ物も、吸収性が悪いものや、ガスが発生しやすい食べ物、急激に膨らむ食べ物などは要注意です。

ワンちゃんの主食であるドッグフードも注意が必要。

ドライフードの場合、製造過程で大量の空気を含むことや、水分を吸収して膨張する可能性があるため、食後に水をがぶ飲みしてしまうと胃が膨らみ、ガスが溜まる原因となってしまい、胃拡張になりさらに胃捻転へと発展してしまう恐れが生じます。

愛犬の食事の仕方は、飼い主さんの注意で予防が可能です。

まず大食いは簡単に防げます。

理由は、ワンちゃん自ら自由にご飯を食べられないからです。

つまり飼い主さんが注意して、大量にえさを与え過ぎなければよいわけです。

また早食いも物理的に防止が可能。

凹凸がついた食器を使って愛犬に食事をさせれば食べにくくなり、自然に早いスピードで食べること自体を防止できます。

「ゆっくりデコボコ食器」

また、一気に水をがぶ飲みさせないように、常に新鮮な水を自由に飲める環境を整えておくことも大切です。

胃捻転の予防として、以前は食器を台などの高いものに乗せて、高い位置で食べさせると予防効果があると言われていました。

そのため、今でも愛犬に高い位置で食事をさせている飼い主さんがみえるかもしれませんね。

しかしこれは要注意でNGです。

最近の研究結果では、反対に高い位置で食事をさせると、胃捻転のリスクが高まると言われています。

このため愛犬の食事は、食器を床に置いて食べさせるようにしてください。

 

「食後すぐの運動」

食後すぐに運動してしまうと、胃捻転が発症しやすいことが、医学的に判明しています。

食後の胃の状態は食べ物が入っており、消化するまでの間は普段より重くなっています。

このため、この状態で散歩などの運動をさせてしまうと、胃が大きく揺れて回転し、ねじれたり腸に絡まったりして、胃捻転を起こしてしまうのです。

したがって、犬の食後1~2時間は激しい運動をさせないように注意しましょう。

 

「ストレス」

愛犬が極度のストレスを感じてしまうと、その影響からで胃の働きが悪くなり、その結果として胃捻転を起こすことがあります。

このため飼い主さんは、愛犬にストレスを与えないように注意を払ってあげましょう。

 

「遺伝的要因」

胃捻転を起こしやすい好発犬種がおり、遺伝的要因が指摘されています。

特に大型犬は、胸が薄く胃が深い箇所にあるため、胃にたまったガスを吐き出しにくい、また、胸が深くウエストの細い大型犬は、ハイリスクグループと呼ばれたりしています。

さらに、大型犬の体型によっては肋骨の内側で胃が動くスペースが広くなり、その余裕のため胃捻転のリスクが高まります。

なお、発症率的にも、一親等以内に発症歴のある犬がいると、約1.6倍の割合で発症率が高まるとされています。

胃捻転を起こしやすい好発犬種は以下の通り。

胃捻転を起こしやすい好発犬種
・グレート・デーン

・ワイマラナー

・セントバーナード

・ジャーマンシェパード

・ゴードンセッター

・アイリッシュセッター

・スタンダードプードル

・ドーベルマン

・ボルゾイ

・ブラッドハウンド

・ウルフハウンド

・秋田犬

・マスティフ

・チャウチャウ

・ブルマスティフ

・ゴールデンレトリバー

・ラブラドールレトリバー

 

「加齢」

老犬になると、胃を支えるじん帯が伸びた状態になることが多く、その影響から胃捻転を起こしやすくなり、リスクが高まるといわれています。

大型犬の場合、5歳以降は毎年20%ずつリスクが高まるとされており、超大型犬の場合、2年も早く、同様に3歳以降において、1年ごとに20%ずつリスクが上昇すると言われています。

 

「他の病気の影響」

他の病気からの影響によっても、犬の胃捻転は起こると言われています。

胃拡張から胃捻転に移行するケースが非常に多いとされています。

また、「膵腫」によって膵臓が腫れたり、胃下垂、さらに膵臓摘出後のケースなども、胃捻転を起こす危険性が高いといわれています。

 

犬の胃捻転の症状

 

犬の胃捻転の主な症状は次の通り。

犬の胃捻転の主な症状
・腹部が大きく膨れる

・腹部を触ると痛がる

・嘔吐

・頻繁にゲップをする

・水を大量に飲む

・えづくが何も吐けない

・大量のよだれが出る

・食欲不振

・落ち着きがなくなりウロウロする

・腹部を頻繁に舐める

・呼吸が荒くなる

・腹部の痛みが生じる

 

犬の胃捻転は時間との勝負です。

飼い主さんが気づいてあげて欲しい、犬の胃捻転の初期症状について詳しく紹介します。

まず注意したい一番のポイントが、食後に起こることです。

 

「落ち着きがなくなりウロウロし出す」

胃捻転が起こり始めた初期症状のケースでは、食後数時間以内に愛犬の落ち着きがなくなります。

腹部の痛みから丸まったり、背中を弓状に曲げた背湾姿勢をとったり、祈りのポーズと呼ばれる前肢を伸ばして胸を床につけて、その格好でお尻を高く持ち上げて、それこそ何かお祈りでもしているような姿勢をしたりします。

関連記事:「犬が伸びのポーズや祈りのポーズをするのは何故?原因や症状は?」

また、落ち着きなく、意味なくウロウロと歩き回ったりし出すため、これらの様子を見逃さないようにしましょう。

さらに痛みが強くなると、腹部を触る事も嫌がるため、こうなったらもう要注意です。

 

「大量のよだれや腹部をなめる」

胃腸捻転を起こすと大量のよだれが出ます。

またお腹が気になるため、盛んに腹部を舐めるといった行動が起こってきます。

食後に大量のよだれを垂らし始めれば、胃腸捻転を疑いましょう。

 

「えづくが何も吐けない」

愛犬の胃捻転の初期症状としての特徴の一つが、えづくが何も吐けない状態。

このため、大量のよだれを垂らす原因ともなります。

血管が圧迫されてしまうため、胃の内容物を吐き出すことができなくなってしまい、吐きたくても吐けない状態であり、えづくが何も吐けないわけです。

なお、まれに嘔吐する場合もありますが、その際の嘔吐物は、コーヒー色であり、強い悪臭を伴います。

 

犬の胃捻転の時系列別の症状

 

犬の胃捻転は、とにかく時間勝負といわれており、少しでも早い段階で飼い主さんが気が付く事が大切です。

このため、時系列別の主な症状を紹介しておきます。

 

「食後1時間後の症状」

食後1時間以内に起こる犬の胃捻転の症状で多いのは、とにかく急に落ち着きがなくなり、ウロウロ歩き回ったりします。

また、嘔吐できないえづきが起こります。

その影響でよだれを垂らし始めます。

腹部に異常を感じ、気持ちが悪いため盛んに舐めたり、噛んだりします。

この段階であれば、まだ胃捻転は起こしておらず、多くの場合、胃拡張だけだと思えます。

注意ポイントは、嘔吐しようとするが何も吐き出せず、何度もえづきを繰り返す点です。

このような愛犬の症状がみられた場合、至急動物病院に愛犬を連れて行ってあげましょう。

 

「食後2~3時間後の症状」

食後2~3時間経過すれば、すでにお腹が大きく膨らんでいます。

元気もなくなっており、ふらふらとよろけるような足取りで、歩くのがやっとです。

このような症状であれば、肝臓や膵臓、腸、大静脈などを圧迫し、さらに胃もねじれ、組織の壊死や感染が広まっており、低血圧症となり急速に状態が悪くなっていきます。

大量の飲水を行い、大量によだれが出て、頻繁にげゲップが出て、えづいています。

最低でもこの状態で動物病院に連れて行かないと手遅れになってしまいます。

もう少したてば、いよいよ強烈な腹部の痛みのため、背中を丸めて横たわって、動けなくなっていきます。

 

「食後5~6時間後の症状」

食後5~6時間も胃捻転を放置してしまえば、もはや末期状態に進んでいます。

ワンちゃんは、横になったまま動けなくなっており、ショック状態から意識も朦朧です。

圧迫を受けた組織の壊死が進行しており、組織の壊死により発生する毒素のため、エンドトキシンショックと呼ばれるショック症状が起こっています。

・チアノーゼ

・脈圧低下

・不整脈

・心不全

・多臓器不全

上記のようなさまざま症状が発生しており、緊急手術が必要となりますが、この状態まで悪化させてしまえば、50%の確率で死亡となります。

また、胃捻転の症状は、胃のねじれる角度によって症状の重さが変わります。

つまり、胃のねじれる角度が大きいほど重症化となり、180度ねじれてしまえば胃が完全にふさがってしまいます。