犬のパテラの治療法!内科療法と外科療法とリハビリ
犬のパテラには症状が4つのグレードに分かれており、グレード1~2などの軽傷のケースでは、消炎鎮痛剤などの炎症を鎮めるための薬や、関節炎を予防するための薬を飲ませることが一般的です。
また、グルコサミンやコンドロイチン等のサプリメントで症状緩和に努めたりもします。
滑りやすいフローリング対策としてマットを敷いたり、ジャンプなどの膝に負担をかける運動をさせないようにして悪化を防ぐことが大切です。
しかし基本的には、外科手術で膝蓋骨が正しい位置に整復できなければ完治は難しいのが現状です。
このため、どの段階のグレードにあったとしても、基本的には手術療法が薦められます。
特に体重があり、膝に負担がかかる大型犬の場合は、グレード1の状態でも早めの手術が推奨されます。
今回は、犬のパテラの治療法として、内科療法と外科療法とリハビリについて紹介します。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の主な治療法
「内科療法」
内科療法とは、対症療法のこととなります。
したがってあくまで、症状の軽減や悪化、再発の防止のための補助的な治療です。
主な治療法は以下の通りです。
・グルコサミンやコンドロイチン等のお馴染みの関節に効果があるサプリで、膝関節の強化や柔軟性を上げる
・ドッグフードなどによるダイエットにより体重を減らして、膝への負担を軽減させる
・痛みがある症状の際には膝への負担を避け、安静にさせ歩かせないようにする
・消炎鎮痛剤などの使用で炎症を鎮める
本来であれが手術をするべきですが、高齢犬であるなど何らかの理由により、手術が行えない場合などには、これらの内科療法による治療を組み合わせて対処します。
ただし、あくまでも膝の状態はそのままであるため、内科療法では完全に進行を止めることは困難であり、少しづつ悪化してしまうのが通常です。
「レーザー治療」
グレードが低い段階の最新の膝蓋骨脱臼の治療法として注目されているのが、近赤外線レーザー治療です。
最大の魅力が安心で安全な治療法であることであり、刺激もほどんど感じることがないそうであり、返ってワンちゃんは、心地よい温かさを感じられるともいわれています。
主な効果は次の通りです。
・血行を促進して良くすることで、神経の流れを促します
・自然治癒力を引き出す効果があります
設備が整った大きな動物病院でないと、まだなかなかレーザー治療は受けられません。
1回の治療費用は、レーザー治療+診察代で約5000円程度です。
通常1回の照射時間は10分程度であり、最初症状が安定するまでは、週に1回~2回程度行うこととなります。
なお、料金は動物病院によってかなり差が生じるケースがあります。
「外科療法」
外科療法による犬のパテラの治療法の考え方は、次の3つとなります。
- 溝を深くする
- 付着点をずらす
- 骨の角度を変える
具体的に説明すれば、次の通りです。
・ひざのお皿がはまっている溝を削って深くしてズレにくくする
・筋肉の付着点を骨ごとずらすころで、脱臼が起こりにくくする
・骨をけずることで、お皿の位置を強引に溝にはまるようにする
上記のような考えに基づいて手術を行うこととなります。
「滑車形成術」
犬のパテラに対する最も一般的な手術法です。
膝蓋骨が収まる溝を削って深くすることで、お皿が外れにくくする手術です。
「脛骨移転術」
膝蓋骨の靭帯の角度を骨ごとずらして変えて、外れにくい方向へ調節する手術です。
「大腿骨・脛骨の矯正骨切術」
滅多に行われない手術ですが、主に重度な骨変形が見られる場合に行う、骨を矯正する手術です。
「内側大腿膝蓋筋膜の開放」
この手術は、単独で行われることは通常なく、他の手術と併用して行われることとなります。
筋膜や関節包などの膝蓋骨を内側に引っぱっている部分を切ることで、軟部組織の緊張を解除する効果が働き、その結果脱臼を起こしにくくします。
「外側大腿膝蓋筋膜の縫縮」
膝蓋骨を外側に引っぱっている大腿膝蓋筋膜を縫うことで、縮めて強化を図る手術です。
膝蓋骨を復元して元の位置に戻した場合、どうしても外側の靭帯が余ってたるんだ状態に
なってしまい、不安定な状態となります。
これを防ぐために、外側大腿膝蓋筋膜を縫合して縮める手術です。
「脛骨内旋制動術」
膝関節の不安定性を減少させるために行う手術です。
内包脱臼は脛を内側にひねった状態になってしまうため、脛の内転を防ぐために脛の骨にワイヤーや縫合糸を通します。
このように犬のパテラの手術方法はたくさんあり、ワンちゃんの状態に応じて適した手術が行われます。
通常ケースでは、単独の一つの術法で行うことはまずなく、複数が組み合わされ併用されることとなります。
手術費用は、15万~40万が相場と言われていますが、病院や地域によっても異なります。
・再診療代
・レントゲン等の検査費用
・血液検査費用
・注射費用
・入院費
・手術費用
・麻酔費用
・退院後の通院費(薬代)
上記が犬のパテラ手術の費用の主な内訳であり、手術を行えば高額治療費となるため、ペット保険に加入しておくことも考えてみるべきでしょう。
手術の必要性
愛犬がパテラにかかった場合、根本的治療は外科手術となります。
内科療法では対症療法のため、完全に治ることはまず困難であり、徐々に病状が悪化していくのが普通です。
このため、基本的には手術が推奨されるわけです。
手術を行うかどうかは、最終的には飼い主さんの意思次第となります。
考慮ポイントは、手術を行わないと進行・悪化が予想されることと、手術によるメリットの大きさといえるでしょう。
最初は内科療法で試してみるのもいいでしょうが、症状が進んで重度になってしまうと、せっかく手術を行っても予後が不良となる可能性が高まります。
手術費も高額ですし、可哀そうだと感じる思いもあるかもしれませんが、特にまだ若い愛犬が元気に走り回れない方が可哀そうだと思います。
高齢犬などの理由で手術が行えない場合は仕方ありませんが、グレードが低い段階での手術であれば、元気になる可能性が高まります。
このため、獣医師に手術を推奨された時点で、愛犬の手術に踏み切るのが一番だと思います。
もちろん手術を行うような重症の病気のケースでは、安心のためにセカンドオピニオンを受けるのもおすすめです。
ただし、癌などの病気と違って、膝蓋骨脱臼においては、あまりどの病院でも見解は変わらない場合が多いといえます。
術後のリハビリ
当然ですが手術を受ければそれで病気が直ぐに治るわけではありません。
手術後には、激しい運動に注意しながら、次のようなリハビリを行う必要があります。
「脚を暖める」
レンジで濡れタオルをチンするなどして、ホットタオルを作り、脚をあたためであげます。
この後、マッサージやストレッチをすると効果が倍増です。
「マッサージ」
脚の付け根あたりの筋肉を優しくマッサージします。
強く抑える必要はないので、とにかく優しく行ってあげましょう。
先ほど述べたように、足をあたためてからするのがおすすめです。
「ストレッチ」
ゆっくりと無理せず脚の曲げ伸ばしを行ってあげましょう。
嫌がる場合は強制せずに、少しずつ動かしてあげるだけでも、可動域が広がっていきます。
具体的なやり方は、愛犬を抱っこした状態で足先を持って、ゆっくりと下に伸ばしてあげます。
愛犬の力が抜けるような状態を感じたならば、そこが限界なのでそれ以上は引っ張らないように注意してください。
続いて反対に上に足を戻してあげます。
この時注意して欲しいのが、膝がしっかり奥まで入るようにすることです。
足の爪がお腹の皮膚に近づく状態まで曲げてあげて押し込んであげましょう。
なかなか言葉では分かりづらいはずなので、実際にパテラのストレッチを行う動画を参考に見てみましょう。
「スイミング」
パテラのリハビリには、水中歩行、水泳といった水中運動が効果的でおすすめです。
関節に負担をかけずに運動を行うことが可能であり、陸上よりも効率的な有酸素運動が可能とされています。
最近は、ワンちゃんのリハビリのための水中歩行機を常備した動物病院も増えてきています。
1回3,000~5,000円程度であり、犬のサイズが大きくなると料金も高くなるのが通常です。
家庭で行う場合は、愛犬にライフジャケットなどを着せて、お風呂のぬるま湯の中で脚を動かすようにすればOKです。
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