犬の歯槽膿漏の主な3つの治療法は全身麻酔で大事!老犬はどうなる?
犬の飼い主さんであれば、3歳以上のワンちゃんの8割が、歯槽膿漏を患っていると聞いたことがあるはずです。
このため、日ごろの歯磨きが大事となりますが、愛犬が歯磨きを嫌がるケースも多く、実に半数の飼い主さんは、愛犬の歯磨きが苦手だと言っているそうです。
このような状況も影響し、愛犬の歯槽膿漏の症状を重度化してしまうケースが多いのです。
細菌が入り込み膿んでしまったり、歯がぐらついてしまえば、もはや歯磨きでは治りません。
今回は、愛犬が歯槽膿漏になってしまったケースでの代表的な3つの治療法を紹介します。
しかしいずれも簡単にはいきません。
犬の場合、じっと大人しくはしていてくれませんから、歯石などを取るにしても全身麻酔が必要となり大事となります。
特に老犬となり体力が低下してくると、全身麻酔は命がけであり、そう簡単には実施できません。
代表的な3つの治療法を紹介するとともに、全身麻酔が出来ない老犬の治療法も合わせて紹介します。
1.歯石除去(スケーリング)
歯槽膿漏の一般的な治療法は、歯垢(プラーク)や歯石を取り除くこととなります。
あなたもきっと何度かは、歯医者で歯垢や歯石を取り除いてもらった経験があるのではないでしょうか。
人間の場合であれば、それほど大事ではありませんが、犬の場合は勝手が違ってきます。
その理由は、そのような治療を行う際に、大人しくじっとしていてくれないからです。
このため犬が暴れてケガをする危険が生じてしまいます。
また、無理矢理行えば恐怖や大きなストレスを与えてしまうこととなります。
このためワンちゃんが安全に治療ができるように行う方法が、全身麻酔となります。
ただし犬にとっては、全身麻酔はかなりのリスクが伴います。
まずは麻酔前の検査が大変です。
若い健康な子であれば、血液検査のみでOKとなりますが、老犬やなんらかの症状がある子の場合、レントゲンや超音波検査、心電図などといろんな検査が必要となってきます。
特に腎臓や心臓の悪い子の場合、後遺症として副作用の危険が高まります。
また、ブルドッグやパグなどの短頭種や肥満犬などは、気管が狭く呼吸管理が難しいため麻酔のリスクが高いとされています。
犬の麻酔関連死による死亡率は、全身麻酔の場合0.18%です。
これは、ワンちゃんが1,000~2,000頭に1頭の割合で死亡してしまうことになります。
このように、犬の全身麻酔には大きな危険が生じることを知っておきましょう。
また、全身麻酔は検査などが多くなってしまうと、費用もかさんでしまいます。
実際の治療は、以下の通りとなります。
・超音波の振動やスケーラーと呼ばれる金属器具などを使用して、歯のすみずみまでの歯垢(プラーク)や歯石を取り除く。
・歯周ポケットの土台を研磨する。
・コーディングをして歯石をつきにくくし、再発を防ぐ。
また、初歩的な治療も併用されます。
・薬を使用して歯磨きを行い、歯石を柔らかくし除去しやすくする。
・歯肉を洗浄し、膿を取り除く。
・生菌剤を使用して、口腔内の細菌バランスを整える。
2.抜歯
歯槽膿漏が進行してしまうと、土台が緩み歯がぐらついてしまいます。
こうなれば抜歯を行います。
抜歯を行う際にも当然全身麻酔となります。
実際の抜歯方法は以下の通りです。
最初に歯垢や歯石の付き具合と、歯のぐらつき具合を確認します。
続いてさらに詳しく、歯の周辺の症状や炎症の程度を確認します。
確認が終われば処置に移ります。
最初に歯根部に溜まっている膿を除去します。
進行が重度で歯を残すのが難しいと判断した場合、抜歯することとなります。
また、歯根部が著しく破壊されているケースでは、歯根部も一緒に抜いてしまうこととなります。
抜いた後の歯茎に抗生物質を注入し、最後に口の中を洗浄して終了となります。
3.歯周組織再生療法
再生療法とは、歯周組織を再生させことで歯を残すことが期待可能となる治療法です。
現状では、人間の治療法としては使用されていますが、ワンちゃんたち動物への使用はまだまだ少ないといえる治療法です。
しかしこれからは、だんだんと動物の世界でも増えてくると期待される治療法です。
この治療法も全身麻酔が必要となります。
犬の場合、少し大掛かりな口の中の治療を行う際には、じっとしていてはくれないため、どうしても全身麻酔が必要となります。
治療法は以下の通りです。
・治療する箇所の歯肉を切開し剥離します。
・歯根表面の掃除をします。
・歯根にゲル状の薬剤を塗り、歯周組織の再生を促します。
薬剤は、EPM(エナメルマトリックス蛋白)という、エムドゲインゲルと呼ばれる歯周組織再生用材料となります。
・切開した歯肉部分を縫合して終了となります。
この後、2~6日後に抜糸を行います。
歯周組織の再生には、通常3~6週間ほどの期間がかかります。
この治療が成功すれば、愛犬に歯を残してあげることができます。
全身麻酔が出来ない老犬の歯槽膿漏の治療法
犬の歯槽膿漏の治療には、全身麻酔が必要なことが理解できたはずですが、果して老犬などの全身麻酔が出来ないケースでの治療法がどうなるか紹介します。
全身麻酔が出来るかどうかの境目が、小型・中型犬は10歳、大型犬なら7歳頃となります。
当然個体差が生じ、健康状態に大きく作用されますが、このあたりの通常「老齢期」と呼ばれる時期からだんだんと全身麻酔が出来なくなっていきます。
また同時にこの時期から、老化現象によって口内環境も一段と悪化し出し、歯槽膿漏になってしまう確率が上がってくるのです。
放置して歯槽膿漏が重度化してしまうと、他の病気を招く原因にも繋がってしまいます。
老犬の全身麻酔を使わない治療法を紹介します。
「局部麻酔」
あなたも歯医者で虫歯治療の際には、歯茎に麻酔を打った経験があるはずです。
局部麻酔はその箇所のみマヒさせて痛みを感じなくさせることができます。
このため、何とか局部麻酔での治療が可能ならば行いたいものです。
ただし、局部麻酔の場合、意識ははっきりしているため、愛犬が大人しくしていられかが最大の問題となります。
小型犬であれば、飼い主さんが補助をしながら体をおさえることで可能とも思えます。
しかし、強いストレスを与えてしまうとこになってしまいます。
したがって、行きつけの動物病院の先生とよく相談することが大切となります。
老犬が歯が痛くて噛めない状態であれば、食事が取れずに体力が低下してしまうのが一番心配となります。
また、膿を呑み込でしまうと、内臓疾患を招くことにもなりかねません。
このため、獣医師と相談しながらも、ある程度の決断が必要といえます。
「投薬治療」
麻酔を使わない治療となれば、必然的に対処療法となります。
なかなか根本的な治療には繋がりませんが、投薬治療することで痛みの軽減や、腫れを抑える効果が期待できます。
投薬治療の主な処置は以下の通りです。
・抗生物質で炎症を抑える
・歯肉軽減剤などで痛みを抑える
・生菌剤(Probiotics)で、口腔内や消化管内微生物叢のバランスを改善する
・歯石を柔らかくする
特に抗生物質による治療は、膿を呑み込んでしまい病気になるリスクを抑える効果もあります。
投薬による内科治療は、歯槽膿漏の根本的な治療には繋がらないため、少しでも重度化を抑えるための長期治療になると認識しておきましょう。
愛犬ミニチュアシュナウザーのキャンディ
昔我が家では、ミニチュアシュナウザーのキャンディちゃんを飼っていました。
結構歯磨きはしっかり行ってあげていたのですが、老犬になり歯槽膿漏と診断されました。
高齢のため全身麻酔は不可能で、投薬治療となりました。
食欲は旺盛であり、痛みもあったのでしょうが、何とか食事はできていました。
一生薬とは付き合っていくこととなりましたね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません