高齢犬になれば、約8割が白内障にかかる可能性があるといわれています。
白内障は通常、犬の年齢的変化に伴いだんだんと、黒目の外側部分から徐々に白く濁って見えだす目の病気で、進行していくと視力障害が起こります。
白内障は初期段階では、なかなか発見するのが難しいとされています。
また、重篤化してしまうと失明することもある恐ろしい病気だと認識しておきましょう。
愛犬が、何故か歩いている時に物にぶつかることが多くなったり、今までのように動くものを目で追わないなどの症状が出だせば要注意。
ちなみに、白内障に似た目の病気で、同じように目が白く濁る「核硬化症」があります。
この病気は加齢が原因となり、水晶体の核部分が固まってしまい、その結果白く見える状態になります。
ただし、白内障のように視力低下や失明はしないとされていますが、核硬化症から白内障が発症する場合もあるため、注意が必要です。
白内障のメカニズムは、現在まだはっきりとは判明していません。
ただし白内障になる原因は、先天性・高齢・糖尿病などの基礎疾患・遺伝・紫外線・有害物質・外傷によるものなど様々なことが考えられます。
このようないろいろな原因のために、水晶体が濁ってしまう病気であるわけです。
詳しく言えば、水晶体の中にある水晶体液がうまく入れ替われなくなってしまうために、白く濁ってしまうとされています。
つまり、水晶体液の新陳代謝がスムーズにいかなくなるわけで、このためタンパク質の結合が水晶体の中で出来始め、本来であれば透明な水晶体が、白く濁った状態になってしまうのです。
白内障は、「先天性白内障」と「後天性白内障」の2つに大きく分類されます。
この2つのグループがさらに細かく、次のような種類に分けられます。
・先天性白内障
・若年性白内障
・代謝性白内障
・加齢性白内障
・外傷性白内障
・眼病による白内障
・中毒による白内障
原因は遺伝であり、既に母犬のお腹の中にいる時から白内障が発症し出しています。
このため、生後2週齢ほどになり、子犬の眼が開いた時には、白内障の症状となっています。
先天性白内障を遺伝的に発症する好発犬種は、次の通り。
・ボストンテリア
・ウエストハイランドホワイトテリア
・ミニチュアシュナウザー
・ジャーマンシェパード
・ノルウェジアンエルクハウンド
・オールドイングリッシュシープドッグ
・ウェルシュスプリンガースパニエル
若年性白内障は、2歳以下で発見される事が多く、遺伝疾患であることが多いため、その場合予防はほぼ不可能とされています。
ただし、必ずしも遺伝のみが原因ではなく、飼育環境や餌も関係しているとも言われています。
遺伝性白内障の場合、原因遺伝子としてHSF4遺伝子が報告されています。
HSF4遺伝子が原因とされる犬種は、ボストンテリア、フレンチブルドッグ、オーストラリアンシェパード、スタッフォードシャーブルテリアなどです。
原因遺伝子が特定されていない犬種で白内障の発生頻度が高い犬種としては、トイプードル、ミニチュアプードル、ミニチュアシュナウザー、柴犬、シーズー、アメリカンコッカースパニエル、ゴールデンレトリバー、シベリアンハスキーなどがいます。
代謝性白内障には、糖尿病や低カルシウム血症、ホルモン疾患などがあります。
この中で最も代表的なのが糖尿病です。
両目で急速に進行するケースでは、特に白内障の原因として糖尿病を疑うべきです。
犬が糖尿病となった場合、白内障を合併して発症する割合が非常に高いとされ、また進行スピードが早いのが特徴です。
なお面白いことにこれが猫になると、糖尿病による白内障はまず起こりません。
これは犬と猫での水晶体による糖代謝経路の違いが原因となるようです。
糖尿病による高血糖が影響し、水晶体内にダルシトールやソルビトールといった糖代謝物質が蓄積してしまい、その結果として浸透圧勾配が生じることで、水晶体への水の移動が起こり、水晶体の濁りが発生します。
低カルシウム血症が原因となっても白内障は起こります。
その場合には、点状や線状の水晶体皮質混濁となり、その原因は、上皮小体機能低下症、急性膵炎、ビタミンD中毒などがあります。
加齢が原因であるものを「老年性白内障」と呼びます。
じつは白内障の最も多い原因が加齢なのです。
人間の場合でも、80歳を越えればほぼ全員に対して、白内障の状態が生じるとされています。
老化が原因となって発症する加齢性白内障の場合、他の要因は特になく、こればかりは宿命と言える高齢犬による白内障です。
一般的な発症年齢は、小型犬であれば10歳以上、大型犬の場合は6歳以上となり、この年齢が白内障を起こす目安年齢の指標と言え、特徴は進行が緩やかなことです。
外傷性白内障には穿孔性外傷と鈍性外傷があり、外的要因による眼のダメージが原因となって起こります。
穿孔性外傷とは、角膜を穿孔した結果、水晶体にまで損傷が及んだケースでは、白内障を引き起こします。
原因は、次の通り。
・散歩で草むらに顔を突っ込んでしまい、枝を目に刺してしまったり、鋭利な草で目を切る
・鋭利な金属などの刺傷
・事故による目の損傷
特に短頭種はマズルが短いため、目を傷つけやすいので注意が必要です。
水晶体の損傷の程度により白内障発症に差異が生じますが、1.5 mm 以上損傷したケースでは要注意とされ、急速な白内障の進行を招いてしまうとされています。
鈍性外傷とは、直接水晶体の損傷を招く場合であり、例えばブドウ膜炎などの病気からの二次的な白内障などもここに含まれます。
また、アトピー性皮膚炎なども原因の一つとなります。
アトピー性皮膚炎の痒みのため、ワンちゃんが自ら掻くことで、外傷性の傷を目に負ってしまうことがあります。
さらに、水晶体に紫外線が当たる事も原因の一つといわれています。
紫外線により体内で活性酸素が発生し、細胞を傷つけ老化現象を起こし、白内障を引き起こす原因にもなります。
なお、紫外線だけでは無く、放射線や赤外線も同様に原因となります。
眼病が原因となって白内障が引き起こされるケースもあります。
ブドウ膜炎による虹彩の癒着や、緑内障、網膜異形成、水晶体脱臼などの他の眼の病気が原因となります。
特にブドウ膜炎が原因となって白内障が起こったケースでは、治療がかなり困難だとされ、例え手術を行っても良い結果が生じない可能性も高いとされています。
中毒が原因となっても白内障が起こります。
何か毒性のあるものを食べてしまったり、あるいは薬剤などが原因となって中毒が起こるケースもあります。
最近特に白内障の原因として指摘されているのが、工業用の防腐剤であるジニトロフェノールや、防虫剤に使用されているナフタリンなどです。
また薬物としては、最も代表的なのが、ケトコナゾール(抗真菌薬)であり、長期投与により白内障を発症することが知られています。
犬の白内障は、おおよそ4段階のステージに分けられます。
白濁は水晶体のふちにある状態のため、自覚症状もまだなく、飼い主が見てもほとんど気付きにくいといえます。
水晶体の一部が白濁しており見え始めてくる状態で、このため視界がぼやけたり、かすむなどの視覚障害が現れ始めます。
白濁が完全に水晶体全体に及び孔の部分が真っ白な状態となり、視力の低下が顕著に出ます。
白内障が進行した最終段階であり、融解が起こった状態のためもはや失明する一歩手前。水晶体が硬くなって炎症を起こしており、眼球の中に融けた残存物を見ることができる状態で、また脱臼するなどの症状も現れ始めます。
犬の白内障は、このように4つのステージに分類され、ステージ1である初期の段階では、自覚症状もなく見た目では分からないため、早期発見は困難とされています。
そのため、飼い主さんが愛犬の異常に気づいた段階では、既にステージ2の未熟白内障か、ステージ3の成熟白内障になりかけている状態であることが多いといえます。
また、犬の白内障は、若い犬がかかってしまうと老犬と比較して、圧倒的に進行具合が早いため、注意が必要です。