犬の股関節形成不全は、約7割が遺伝的な先天的な原因とされますが、それでもしっかり予防法を実施することで、防げたり進行を遅らせることが可能となります。
また今回は、主な3つの治療法と気になる手術費用も紹介します。
愛犬の股関節形成不全の有効な予防法の一つが体重管理。
特に犬の場合、生後60日の間に骨が急速に成長します。
したがってこの時期に、とくに股関節への過度のストレスは厳禁。
しっかり体重管理を行って、肥満させることがないように注意しましょう。
また大型犬の子犬は、とにかくこの時期みるみる成長して大きくなっていきます。
そのため、標準以上に肥満させれば、その負担は何倍にも膨らみ、異形成を起こしやすくなってしまいます。
股関節形成不全の発症リスクを抑えるためにも、犬の体重管理に注意しましょう。
特に股関節形成不全の好発犬種とされる次の大型犬は特に要注意、徹底した体重管理を行ってください。
・グレートピレニーズ
・ジャーマンシェパード
・ボルゾイ
愛犬の股関節の負担を減らすための、環境整備も重要な予防法です。
先ずは、フローリングに滑り止め防止のマットを敷くなどの対策を行ってください。
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フローリングの床で滑ってしまうと、股関節を痛めてしまいます。
また、マットを敷くことは、滑り止めのみならずクッション作用も働き、愛犬がソファーなどの段差から飛び降りた際の衝撃を和らげてくれる役目も担ってくれます。
次に、肉球のケアも忘れずに。
毛が伸びて肉球が隠れていると、止まれず滑ってしまうため、しっかり毛をカットしておくことが大切です。
さらに段差の環境にも注意を払い、ソファーなどに「ペットスロープ」などを設置して、愛犬が飛び降りることなくスムーズに上り下りができる対策を実施しましょう。
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続いて階段にも注意。
犬は四つ足のため、特に階段を下りるのが苦手、滑って落ちることがないように、滑り止め階段マットを貼って使用し、安全対策を行いましょう。
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愛犬が股関節形成不全を発症した初期の軽度な状態であれば、無理せず悪化させないためにも、安静に努めて状態の維持を図ることが大切となります。
運動量が低下すると肥満の元のため、食事の量にも注意が必要となります。
ただし、股関節形成不全を発症する時期は、成長盛りのパピー期であることが多く、十分な栄養摂取も必要な時期となります。
このため食事量を含めた体重管理には、獣医師に相談して指示を受けるのがおすすめです。
また、運動も制限してしまうと、筋力などが低下してしまうため、痛みが生じない程度の運動量を見つけだすなどの工夫を行い、軽めの運動を行い、股関節が正常に成長するように注意する必要があります。
愛犬が股関節形成不全となり、痛みが生じているケースでは、炎症をやわらげる効果がある抗炎症剤や鎮痛薬などの薬を使用します。
抗炎症剤や鎮痛薬などの薬の投与により、痛みを緩和して関節炎の進行を抑えることとなります。
またこれらの痛みをコントロールをすると同時に大事なことが、食事療法による体重管理と運動制限になります。
なお、激しい痛みが生じているケースでは、非ステロイド性の消炎鎮痛薬を使用することとなります。
まずはこれらの薬を使用して、症状や痛みは軽減させることが大事です。
ただし、関節の軟骨変性や変形などの根本原因は、完全には修復されません。
愛犬の股関節形成不全に対して投薬治療の効果が低く、安静を維持しても回復が見込めない、また運動機能に障害が見られるような重症例のケースでは、外科手術が施されます。
手術の方法には以下の通りいくつかあります。
・大腿骨頭切除術と呼ばれる、大腿骨の骨頭を切除して、痛みをやわらげるもの
・骨盤3点骨切り術と呼ばれる、骨盤の3箇所の骨を切断する方法
・線維性偽関節形成術と呼ばれる、太ももの骨を切除して関節を人工的に形成する方法
・内ももに走っている恥骨筋を切除する方法
・股関節全置換手術と呼ばれる、股関節をそっくり人工関節に入れ替えるもの
・骨盤のくぼみを人工的に形成するもの
このように幾つかの手術方法があり、これらは犬の年齢や症状にあわせるなどして適宜選択されます。
なお、股関節形成不全の手術においてよく行われる手術方法が、「大腿骨頭切除術」。
ただし、犬の体重が20キロを超え出すと、いろいろ問題が生じるともされています。
また手術後のリハビリも大変で、歩けるようになるまで2〜3ヶ月はかかるとされています。
骨盤3点骨切り術による手術は、骨盤の三ヶ所(腸骨・坐骨・恥骨)で骨を切る手術となります。
股関節の凹みの角度を変えることで、大腿骨頭が脱臼しにくいように整形する手術方法です。
また、股関節全置換手術は、他の手術法で治療が難しい場合などに実施されますが、人工関節の適応が可能かどうか、CT検査などによる綿密な鑑別が必要になり、そう簡単に受けられる手術ではありません。
また大手術となり、実際にこの手術に対して経験豊富な獣医師がまだ少ないなどの問題もあり、さらにとても高額な手術となります。
気になる外科治療の手術費を見ていきましょう。
大腿骨頭切除手術の相場費用は、およそ70,000円から250,000円程度。
犬の大きさや病院の料金体系の違いにより、大きな差が生じてしまいます。
大型犬は、全身麻酔の量も多くなり何かと費用がかさみます。
3点骨盤骨切り手術の相場費用は、およそ190,000円から300,000円程度。
手術費用の内訳は以下の通り。
・入院費用3,000円 ~ 8,000円/日(行う手術により入院日数が異なる)
・血液検査:2,000円~3,000円
・レントゲン撮影:は3,000円~5,000円
・その他検査:10,000円~20,000円
・全身麻酔:5,000円~7,000円
・鎮静剤注射料:1,000円
・抗生剤注:3,000円~5,000円
・入院中内服料:1,000円~3,000円
これに手術費用が加わります。
大腿骨頭切除手術であれば、30,000円~150,000円程度。
3点骨盤骨切り手術であれば、150,000円~200,000円程度。
また入院に日数は、大腿骨頭切除手術と3点骨盤骨切り手術ともに5日間程度。
なお、股関節全置換術の手術の場合は、悪化した関節部分の骨を切除し、金属やポリエチレンなどの人工関節に置き換えるもので、人工関節の値段が非常に高いため高額手術となります。
股関節全置換術は、片足でも20万円〜50万円程度かかってしまいます。
通常成犬の場合、多くが両足で発症するため、両足で手術を行えば、100万円を超えてしまうようなケースもあります。
非常に高額な手術となりますが、現状ではまだまだ問題点が多く、100%効果が期待できないなど問題が山積みです。