犬の死因の第二位であるのが心臓病です。
その心臓病の中で発症率ナンバー1で、7割~8割を占めるともいわれるのが「僧帽弁閉鎖不全症」です。
このため、ワンちゃんの心臓病といえば、僧帽弁閉鎖不全症を疑えとされるほどです。
心臓の病気は、愛犬の命にかかわる病気であるため、最も多い心臓病とされる僧帽弁閉鎖不全症が、どのような原因で起こり、どんな症状をもたらすのかはとても飼い主さんであれば気になるところでしょう。
今回はこの気になる僧帽弁閉鎖不全症について、原因と症状と治療法について、分かりやすく紹介します。
心臓の主な役割は、全身に血液を送るための血液ポンプだといえます。
血液には重要な酸素や栄養などがたくさん含まれており、これを全身に届ける心臓の働きはとても大切であり、心臓が弱り血液が全身に行き届かない状態になると、生命維持ができなくなって死亡してしまいます。
犬の心臓も人間の心臓も作りは同じであり、4つの部屋に分かれています。
今回取り上げる僧帽弁閉鎖不全症の帽弁というのは、左心室と左心房を仕切っている2枚の弁となります。
血液を全身に送るためには、心臓が強い力で一気に収縮する必要があります。
このときもしも、左右の心房との間にある僧帽弁が上手く閉まっていなければ、血液の一部が逆流してしまうこととなります。
本来血液の流れは、必ず一方通行であることが条件となります。
ところがこの暗黙の了解が、僧帽弁の不具合が生じることで乱れてしまい、血液の一部が逆流してしまう状態が生じれば、心臓の機能低下となります。
その結果、血液が全身に届かない緊急事態が起こり、十分に血液が供給されなかった臓器や器官に問題が生じ出します。
また、心臓の機能も徐々に退化していき、帽弁閉鎖不全症により、心臓が上手く機能しない心不全と呼ばれる状態になってしまいます。
僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬や老犬が発症しやすい病気なので、特に高齢の小型犬は要注意となる病気です。
ペット保険会社の保険請求データによると、僧帽弁閉鎖不全症は全疾患の5%程度に当たり、ワンちゃんの年齢別で見てみると、6~7歳頃から罹患率が増え始め、10歳を超えると10%以上、12歳では20%以上との報告もあがっています。
また犬種別では、循環器の病気にかかりやすいとされる小型犬が多く発症します。
好発犬種は以下の通りです。
・チャールズ
・スパニエル
・マルチーズ
・チワワ
・ポメラニアン
・シーズー
・パピヨン
・トイプードル
・ミニチュアシュナウザー
・ペキニーズ
・ウィペット
・ボストンテリア
・ミニチュアピンシャー
特にこの中でもキャバリアは、多因子遺伝形式であることが示唆されており要注意です。
このため、年齢が若くても僧帽弁閉鎖不全症になることが多いとされています。
もしもあなたの愛犬が、「僧帽弁閉鎖不全症」と診断された場合に、是非読んで参考にしてもらいたい著書を一つ紹介しておきます。
幻冬舎メディアコンサルティング/著者:上地正実
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犬の僧帽弁閉鎖不全症の原因ははっきりしていませんが、僧帽弁の粘液腫様変性という変化が主な原因と考えられており、この変性が起こることで、僧帽弁が肥厚し、弁がしっかり閉じなくなって生じてしまいます。。
また、キャバリアなど、遺伝的に僧帽弁閉鎖が起こりやすい犬種があることも分かっています。
僧帽弁閉鎖不全症の初期の症状は、特に目立った症状が現れないため、なかなか気づくことが困難であり、飼い主さんが症状を見逃すことはよくあります。
それでも病状が徐々に進んでいくことで、次のような症状が少しずつ出てきます。
・ 元気がなくなる
・ 運動するとすぐに疲れる 寝ている時間が長くなる
・ 運動後や興奮すると咳をする
・ 手足先が冷たい
・ 食欲が減少する
・ 痩せてくる
・ 呼吸困難になる
上記のような症状から、心臓病を推測することは正直なかなか困難であり、シニア期以降で起こり出すことが多いため、うちの子も老犬になり衰えだしてきたなと思ってしまいがちです。
注目してもらいたいのが、愛犬が運動したがらなくなることですね。
この状態を「運動不耐性」と呼びますが、今まで大好きだった散歩に行きたがらなくなったり、散歩に行ってもすぐに休みたがったり、実際にすぐ止まってしまうようであれば、直ぐにおかしいなと異変に気づくことが可能です。
このような症状が目立ちだし続く場合は、一度できるだけ早く動物病院で獣医師の診断を受けておくのがおすすめです。
とにかく、早期発見、早期治療につなげることが肝心です。
さらに症状が進んでくると、安静時にも咳が出だします。
全身の酸素不足が起こり、血圧が維持できなくなってくるため、ほとんど動かずに眠っていることが多くなってきます。
また、呼吸困難が起こったり、肺やお腹に水が溜まってしまったり、脳が低酸素状態になることから失神するケースもあります。
なお、失神が起こると予後が良くないともいわれているので心配です。
酸素濃度の低下を招くことから、唇や舌などが紫色になるチアノーゼを起こすこともあります。
僧帽弁閉鎖不全症は、次のような合併症になることがあるので注意しましょう。
・肺高血圧症
・上室頻拍
・心室頻拍
・心房細動
・肺水腫
・心嚢水(しんのうすい)
僧帽弁閉鎖不全症が進んでいくと、肺水腫を引き起こしてしまいます。
肺水腫とは、血管からしみ出した液体により、肺に水が溜まってしまう病気であり、このため酸素と二酸化炭素の交換ができなくなってしまいます。
このため運動をしていない状態でも、息苦しくなってしまい、ゼーゼーといった苦しそうな息を行い、呼吸困難やチアノーゼを起こしてしまいます。
僧帽弁閉鎖不全症は、進行具合によってそれぞれの症状や状態別に5つのステージに分けられます。
ステージ別の症状に即して治療法を見ていきましょう。
ステージ | 症状 |
ステージA | 症状は出ていませんが、心疾患のリスクのある犬種は注意しましょう。 |
ステージB1 | 心音に雑音が入り器質的異常はあるが、心臓エコー検査、レントゲン検査で心拡大がなく症状はなし。 |
ステージB2 | 心臓エコー検査、レントゲン検査で心臓(心臓の左側)の肥大がみられるようになるが、まだ目だった症状はなし。 |
ステージC | 疲れやすくなり、夜中から明け方に咳がでるなどの心不全により症状がある。 |
ステージD | チアノーゼ、肺水腫、呼吸困難などのひどい心不全の症状があり、入院を施す必要がある心不全の状態。 |
ステージAと呼ばれていますが、まだまったく症状はでていません。
ただし、心臓病になる可能性が出てきたので注意したほうがいいというレベルのため、先ほど紹介した好発犬種は、紹介した症状が出始めていないか注意をしてあげてください。
心臓エコー検査、レントゲン検査では心拡大がなく、まだ問題症状も起こっていませんが、聴診器で心臓の音を聞くと、逆流する時の音が混ざって聞き取れだす状態です。
特に体調変化も感じとれず、愛犬はまだ元気一杯に見えますが、確実に心臓病が始まり出しています。
したがって飼い主さんは、少しでも愛犬の心臓病の進行を遅らせるように心がけてあげる必要があります。
肥満は心臓病の大敵なので、体重管理に留意し、また、心臓に負担をかける塩分が多い食べ物も要注意です。
心臓病のワンちゃんの場合、当然ですがハードな運動をさせることができないため、食事療法で体重管理を行うこととなります。
心臓病の犬の食事で一番の注意が、塩分のとりすぎのため、特に薄味に慣らせることが大事ともいえます。
塩分を多く摂取してしまうと体内に水分が溜まりやすくなり、そのため血液量が増えてしまい、心臓に負担がかかってしまうのです。
このため、心臓病用に開発された専用の療法食を与えてあげるのもおすすめです。
オススメの療法食を紹介しておきます。
みらいのドッグフード「特別療法食SI」は、僧帽弁閉鎖不全症や心臓肥大、肺水腫などの心臓疾患のトラブルを抱える犬を対象とした薬膳食事療法食です。
心臓への負担を軽くすることを目的とし、血液循環を健康に保つことを目指しています。
なお、みらいのドッグフード「特別療法食SI・心臓病用」について、詳しく知りたい方は、次の記事を参照してみましょう。
また、信頼できる獣医師を見つけておくことも大切です。
心臓エコー検査、レントゲン検査で心臓の左側の肥大が確認できる状態です。
まだ目だった症状は出ていない時期ですが、レントゲン検査で心臓肥大が確認できるため、他の病気、例えばヘルニアや股関節の異常のためにレントゲンをとったところ、発見されることも多いといいます。
小型犬であれば、心臓も一緒に映り込むため、発見されやすいのです。
この時期に発見されると内科治療により、ACE阻害薬などの薬が処方されます。
ACE阻害薬は、副作用も少なく安全な薬です。
ステージCになってしまうと、症状が出始めます。
このため、最もよくこのステージで愛犬の僧帽弁閉鎖不全症に気づくことが多いです。
散歩を嫌がり出したり、散歩の途中で止まってしまいすぐ疲れる、散歩中や明け方に咳をするなどという症状が出始めます。
治療は内服薬の投与となりますが、残念ながら一旦悪くなった僧帽弁を薬で元の状態に戻すことはできません。
あくまでも、症状の緩和と延命処置となります。
まず最初に飲み始めるのが「ACE阻害薬」であり、効果は血管を拡張させることで血圧を下げる作用があり、心臓から全身へ血液を流れやすくしてくれます。
副作用も少なく安全な薬ですが、一度飲み始めれば生涯に渡って飲み続ける必要があると認識しておきましょう。
その他には、血管拡張剤として、「硝酸イソソルビド」や「アムロジピン」を併用したりします。
肺やお腹などに水が溜まりやすくなるのも特徴のため、尿として水分を排出できる「利尿剤」も有効となります。
特に肺水腫に有効だとされ、尿を大量に排出することで、血液量を減らしてうっ血の改善が期待できます。
心臓の機能が弱まってきた場合には、「カルシウム感受性増強剤」などが使用されることもあります。
これらの薬の効き具合も個体差があるため、愛犬の様子を観察して、薬の効き具合や、症状の度合いをしっかりと獣医師に報告することが大切です。
と言っても、なかなか薬の効き具合の判定など分かりずらいものです。
ここで薬の効き具合を判定する目安を一つ紹介しておきましょう。
それは、愛犬の咳の回数です。
咳の回数が少なくなれば、薬の効き目があった証拠といえます。
また、変化がなければその薬はあまり効かなかったいえます。
当然これはあくまで一つの目安です。
詳しくは獣医師から、注意するポイントなどを聞いておきましょう。
このステージになると、正直愛犬を見ているのが辛くなることが増えてきます。
もはや、心臓病の進行を遅らせる処置というレベルではなく、いかに愛犬が苦しむことなく、穏やかに過ごせるのかを考えてあげるべきだといえます。
出来る限り一緒にいる時間を増やしてあげ、飼い主さんと愛犬に残されている時間を大事にして欲しいと願います。
薬も増え、食べ物の制限も入り、辛いことばかり多くなってしまいます。
散歩にも行けなくなっていたり、仮に行けても獣医さんからは、散歩はやめるようにアドバイスされることが多くなります。
これはどうしても散歩は心臓に負担がかかり、散歩中に死亡してしまうワンちゃんもいるためです。
しかし外に出て、お日様に当たり、風に吹かれるだけでもリフレッシュでき、楽しい気分になれるものです。
あなたの愛犬が、散歩が大好きであったならば、完全に散歩を止めずに、抱っこ紐で抱っこして散歩してあげたり、キャリーバッグに入れて外出させてあげましょう。
ちょと庭に出してあげるのもおすすめです。
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また、抱っこ紐は、肩ひもの長さの調節が可能であり、飼い主さんの体型に合った高さでワンちゃんを抱っこすることができ、負担がより少なくなります。
さらに、取り外しOKの底板がついており、底板とクッションの2つのタイプで使用でき、底板を入れれば安定して愛犬を収めることが可能となります。
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肩ベルトの幅が広く作ってあることで、飼い主の肩の負担を軽減してくれます。
こだわりの特殊構造のリングで、一度絡めると長さ調整後にズレることなく使用できます。
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なお、ステージDのような、肺水腫を起こすまでの状態まで僧帽弁閉鎖不全症が進行してしまえば、犬の余命は平均1年以内と言われています。
このため、ここまで悪化させる前に僧帽弁形成手術を愛犬に受けさせ、手術で人間と同じように人工心肺をつけるという方法がなくはありません。
しかしこの手術は高度な外科手術となり、その設備を整える病院もその技術を持つ獣医師もかなり限られており、残念ながら犬の治療の場合、現実的ではない治療法だと位置づけられています。