今回は愛犬が子宮蓄膿症なのかの確認検査の仕方と、治療法について紹介します。
また、手術の成功率が下がるリスクについても見ていきましょう。
子宮蓄膿症には、開放型と閉鎖型があります。
開放型の場合、陰部からの膿の流出があるために、すぐに判断が可能です。
問題は閉鎖型であり、こちらは膿が子宮内に留まっており外部に膿が出ないため、見た目では直ぐには判断できません。
したがって主に次の3つの検査で確認することとなります。
まずは最も簡単に行える血液検査から始めるのが普通です。
初期の段階では、まだ異常が出ないこともあります。
チェックポイントは、白血球の数が増えているかどうかと、炎症マーカー(CRP)の数値も参考にしたりします。
なお、同時に好中球の炎症の所見具合によって、同様に子宮内に液体が溜まる「子宮水腫」との違いを判別できます。
血液検査の数値によって、他の器官である腎臓などへの影響ダメージも把握可能となります。
血液検査費用は、項目数によって価格が変化しますか、相場は5,000~7,000円といったところです。
レントゲン検査によって子宮の状態を確認します。
子宮蓄膿症であれば、液体を含んで子宮が白く大きくなっています。
なお、同様の症状である「子宮水腫」との判別は、先ほど紹介した通り、血液検査で行います。
またレントゲン検査は、膨らんだ子宮確認は当然とし、それ以外の病気の疑いがないかを診るためにも重要です。
レントゲン検査費用は、犬のサイズでも変化しますが、相場は3,000~7,000円といったところです。
超音波検査は、犬の体にダメージを与えることなく体内を詳しくみることができ、子宮蓄膿症を診断する確実な方法といえます。
子宮に液体が溜まっている像が見えた段階で、子宮に超音波をあてることで詳細確認ができて、判断確立が高まります。
超音波検査費用も犬のサイズによっても変化しますが、相場は3,000~6,000円といったところです。
子宮蓄膿症は通常緊急疾患となるため、検査で判明すれば緊急入院となり、すぐに手術になることが多いと認識しておきましょう。
治療法としては、一般的には外科手術を行い、ウミの溜まった子宮を摘出することになります。
ただし、早期発見により、ウミだけを排出できる状態であれば、子宮を残したままで内科的治療を行うケースもあります。
内科的治療を行うケースは、以下のような状態の場合となります。
・早期段階である
・愛犬が高齢のため手術のリスクが非常に高く手術ができない
・不全や腎不全などを持っていて、麻酔のリスクが極めて高く全身麻酔がかけられない
・繁殖希望のために子宮を残したい
このような理由により、抗生物質などによる内科的治療を実施します。
子宮蓄膿症治療に使用するする場合、一般的な抗生物質よりも強めのタイプが使われることが多いようです。
このような点滴や投薬による治療は、効果が働かず改善しないケースも多く、また、仮に症状が改善した場合でも、次の発情期のときに再発する可能性が高く、イタチごっこで治療を繰りかえす可能性があります。
子宮を収縮させる黄体期を終わらせるために、黄体ホルモンを減らすことを目的にホルモン剤(アグレプリストンアリジン)の投与を行います。
この薬は、副作用の心配も少なく安全性が高いためよく使用され、効果が発揮できれば2週間程度で子宮内に溜まった膿が無くなります。
アリジンのおかげで子宮蓄膿症に対しての内科的治療の効果が上がり、改善率が80%程度といわれています。
ただし問題点もあり、避妊手術がなされていない限り女性ホルモンが働くため、継続的な投与が必要になります。
他には、人間のお産時などで、陣痛の誘発、促進のために使われる子宮収縮剤(プロスタグランジン)という薬剤を使用し、犬の子宮平滑筋を収縮させることで膿を膣より排出させ、改善させる治療もあります。
ただしこの治療方法は、治療効果が低く、また副作用の心配があるため、現在では余り行われていません。
特に閉塞性の場合は危険な状態であるため、全身状態に問題がなければすぐに子宮を摘出する手術が行われます。
血液検査の結果、全身状態が悪いと判断されれば、数日間入院・点滴を行い体調管理を実施し、再検査でOKと確認してから手術することもあります。
手術費用は、病状や病院によっても異なりますが、総額で10万円~30万円程度はかかります。
子宮蓄膿症の手術は、通常状態であれば成功率は85%~90%と言われています。
ただし、次のようなリスクを抱えた状態の場合、手術の成功率が下がってしまいます。
それこそ一刻を争うような状態であり、子宮が破れてしまっていたり、穴が開いているなど、子宮に傷がついている状態での緊急手術のケースでは、手術の成功率が下がってしまいます。
子宮が破損した状態では、子宮に溜った細菌だらけの膿が腹腔内に漏れており、このため他の臓器などに悪影響を及ぼしてしまいます。
このため、スピード勝負となり、速やかに子宮を取り除き腹腔内を洗浄する処置を行う必要が生じ、一歩間違えば命を落としてしまいます。
子宮蓄膿症の手術実施時に、すでに状態が悪化している場合は、不整脈や血圧の低下などが生じやすく、麻酔のリスクがとても高い危険な手術となってしまいます。
少しでもリスクを減らすためには、悪化する前に少しでも早く気づき手術をすることです。
高齢犬の場合体力も低下しており、さらにそこに子宮蓄膿症で弱っていれば、手術そのもののリスクが高くなり、生命にかかわるような合併症が併発する危険性もあります。
また、全身麻酔事態に耐えられない可能性もあります。
犬の子宮蓄膿症の治療方法として最も確実だとして推奨されているのは、避妊手術を行い子宮と卵巣を摘出手術することです。
子宮を摘出してしまうことで、炎症が起こる要素をなくしてしまうのです。