犬のヘルニアは、放置して自然に治ることはありません。
したがって重症化する前に、早めに動物病院で診てもらい治療する必要があります。
実は犬のヘルニアには、進行の段階別に5つのグレードがあります。
今回は5つのグレード状態を紹介し、それぞれの治療法や回復率の違いを説明します。
まず最初に犬のヘルニアの主な治療方を紹介します。
ヘルニア症状の悪化を少しでも避けるために絶対安静がまずは必須です。
このため、散歩などの運動制限はもちろんとして、動き回らないようにゲージから出さないのがおすすめです。
また、同時に肥満が原因となっているケースでは、体重管理を行い、食事制限により減量を実施します。
まず最初の軽度の段階では、投薬や注射などを定期的に行う内科的治療となります。
非ステロイド系の薬や抗炎症薬・鎮痛薬を使用して、薬で痛みを押さえる治療が施されます。
患部を温め、同時にマッサージを行ったりもします。
血の巡りをよくすることで、自然治癒力を高める治療です。
投薬により痛みを和らげた後に、温熱療法を併用するケースも多いです。
鍼を打つことによって筋肉の緊張を解き、血行を促進する治療となります。
ワンちゃんの負担が軽く、手術と違って後遺症が残る心配もなく安全性が高い上に効き目も期待できる治療のため、最近は積極的に鍼治療を導入している動物病院が増加しています。
なお、椎間板ヘルニアへの治療だけではなく、皮膚疾患や糖尿病などの内臓系の病気にも活用されています。
重症化した場合には、手術による外科的治療を行い、脊髄を圧迫する原因となる飛び出した椎間板物質を物理的に取り除きます。
ただし、手術にはリスクが伴うため、最初は内科的治療を行うのが普通です。
全身麻酔となるため大きな負担がかかります。
犬の麻酔関連死による死亡率は、全身麻酔の場合0.18%です。
つまり、ワンちゃんが1,000~2,000頭に1頭の割合で死亡してしまうことになります。
また、高齢犬となれば体力が低下しており、手術に耐えられない危険もありますし、手術自体が不可能と判断されるケースもあります。
さらにヘルニアの手術となれば、動物病院によっても大きく異なりますが、手術費用が20~50万円程度はかかってしまい大きな負担となります。
CTスキャンなどの手術前検査料がまず必要となり、続いて手術料・麻酔料、さらに当然術後約1週間程度は入院料がかかってきます。
なお、手術後にもリハビリが必須であり、後遺症が残る心配もあります。
背骨に痛みが生じていますが、まだ自力歩行は可能で麻痺はありません。
抱きかかえると痛みのため「キャン」と鳴くことがあります。
・散歩などの運動を嫌がり出します
・小さな段差の上り下りができなくなります
まだ何とか歩行は可能ですが、不全麻痺があります。
したがって、足元がふらつきフラフラ歩きとなったり、ズリズリと足を引きずるようなずり足歩行になります。
完全に麻痺が起こり、かなり自力歩行が困難となります。
思うように自力で後ろ足が動かせなくなります。
このため、後ろ足を引きずって前足だけで歩くようになります。
麻痺により、自力歩行が不可となります。
さらに排尿障害が生じます。
このため、自分の力でオシッコが出来なくなり、常に尿が垂れ流し状態となります。
深いところの痛覚までなくなる深部痛覚の消失となります。
このため、もはや後ろ足を強く触ったり、押さえても痛みを感じません。
上記の通り、犬のヘルニアには5つのグレード症状があり、グレード別で治療法や回復率が違ってきます。
外科手術の場合、大きなリスクが伴うため、まず最初の1~3の軽いグレードの場合、内科治療が実施されます。
当然グレードにより回復率も異なります。
一般的に、グレード1~グレード4までは、それほど大きく内科治療回復率と外科手術回復率に違いは生じません。
大きな分かれ目となるのが、グレード4とグレード5です。
グレード5になってしまうと、内科治療ではもはやほぼ回復は見込めません。
外科手術による回復率も、60%程度とグッと低下します。
外科手術の場合、グレード4までであれば、90%以上の回復率があるとされています。
なお、内科治療の場合であっても、グレード4までであれば、80%以上の回復率があるとされています。
通常ケースの場合、グレード3あたりが基準となり、このグレードまで内科治療の効果が生じていないケースでは、獣医師から外科手術の提案が出だします。
外科手術は、高リスクが生じるため、慎重に判断すべきですが、グレード5に進行してしまうと手術回復率も60%までグッと低下するため、それまでに行う決断が必要といえます。
犬のヘルニアには、5つのグレード症状があることが理解できたはずです。
そしてこのグレード別で治療法と回復率が違ってきます。
治療法は、内科的治療と外科的治療に大別されます。
まずは安全度の高い内科的治療を行い、効果が期待できないケースでは、グレード3あたりを目安とし、手術を考えることになります。
ここでのポイントは、グレード5まで進行させてしまえば、手術の回復率が60%と一気に低下してしまうことです。
このため、外科手術をするタイミングは、グレード3以上のまだ回復率が高いうちがおすすめです。