あなたは、カプノサイトファーガ感染症を知っていますか?
そんな舌を噛みそうな難しい名前の病気など知らないと言われそうですね。
しかしあなたが愛犬と一緒に暮らしているならは、是非知っておく病気と言えます。
カプノサイトファーガ感染症は、犬や猫などのペットから、人間が感染する危険な病気なのです。
ペットを飼っている人であれば、人獣共通感染症という言葉は、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
人獣共通感染症とは、人はもちろん犬猫などのペットにも感染する病気のことであり、カプノサイトファーガ感染症もその一つなのです。
今回は、カプノサイトファーガ感染症の症状や原因、治療法などについて紹介します。
カプノサイトファーガ感染症は、次の3種類の細菌を原因とする病気です。
これらの細菌は、犬や猫の口腔内に存在します。
このため、犬や猫に噛まれてしまったり、または引っ掻かれたりすることで、感染すると言われています。
また、傷口をワンちゃんになめられても唾液感染するため、傷口や口などを安易に舐めさせない注意が必要です。
過去にカプノサイトファーガ感染症として報告された患者数はさほど多くなく、このため発症率は低いと考えられますが、体力が衰えた老人や病人、免疫力が弱い人は注意が必要です。
なおこれまで、ヒトからヒトへと感染したという報告例はありません。
潜伏期間は、1~14日とされていますが、多くの場合1~5日で発症します。
症状は発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などであり、重症化すると敗血症を起こしやすく、稀に髄膜炎にもなります。
播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血性ショック、多臓器不全に進行することで、死亡することがあるため注意が必要です。
日本においては、1993年から2017年までの間で、計93例の発症例が確認されています。
そして、そのうち死亡が19例となっています。
特徴は、患者の発症者の95%が40歳代以上の中高年齢者であることであり、平均年齢は約64歳とされています。
男女比は、男性が68例で女性が25例です。
また、感染源は、犬が52例、猫が20例、犬と猫との接触歴が18例、不明3例となっています。
外国での最初の報告例は1976年の米国であり、その後、2017年までに世界中で約500例が報告されています。
3つの細菌別の犬や猫の保菌率状況は次の通りです。
犬は74~82%、猫は57~64%。
犬は86~98%、猫は84~86%。
この菌種は新種のため、残念ながら現在調査中であり、まだまとまっておらず報告はありません。
なお、他の動物についての詳細は不明です。
上記報告の保菌率の通り、ほとんどの犬や猫が口腔内に保菌していることが分かります。
このため、愛犬に噛まれるようなことはまずないでしょが、無暗に舐めさせたり、キスをするまたは食器を共有するような行為は必ず避けて、ペットとは節度を持って触れ合うように心がけてください。
また、ペットと触れあった後では、手洗いなどを確実に実行する習慣を身につけましょう。
早期診断が可能となる検査法は現在まだありません。
検査方法は血液検査となりますが、培養が陽性になるのに数日以上もかかってしまいます。
カプノサイトファーガ感染症のためのワクチンは、動物用も人間用も一切ありません。
このため、必要以上に犬や猫などのペットと触れ合うことは避けるべきです。
よく平気で愛犬とキスをする飼い主さんが見えますが、このような行為は厳禁だと認識してください。
また、日ごろから犬や猫と触れ合った後は、必ず手洗いを徹底することが大切となります。
万が一犬や猫に噛まれる、あるいは引っ掻かれてしまったケースでは、直ぐに傷口を石鹸を用いてよく洗い流すようにしてください。
免疫力が弱ってしまうと、カプノサイトファーガ感染症に発症する可能性が高まるため、健康状態に留意することも大切な予防策となります。
初期症状が風邪に似ているため、敗血症などへ進行させないうちに治療を行うことが大切となります。
もしも、犬や猫に噛まれたり引っ掻かれたり、傷口を舐められるようなことがあった後に、風邪のような症状が出た場合は、感染症を疑う必要もあります。
治療法としては、一般的にはペニシリン系、テトラサイクリン系抗菌薬を用いることとなります。
感染症法の届出対象疾病ではないため、保健所等への届出は不要です。
なお、相談窓口は、国立感染症研究所獣医科学部第一室(03-5285-1111内線2622)となります。
カプノサイトファーガ感染症は、人獣共通感染症の一つであり、犬や猫から感染します。
多くの犬や猫の口腔内に保菌されており、最悪人間が感染すれば死を招くケースもある恐ろしい病気であると認識しておきましょう。
このため、カプノサイトファーガ感染症の恐ろしさをもっと一般にも知らしめて、安易にペットとキスなどしないように認識させることが大切となります。