犬が「水を飲むこと」は当然であり、ある面健康な証拠ですが、「水を飲んで吐くこと」を繰り返す場合は要注意と言えます。
犬はもともと吐きやすい動物といわれていますが、さすがに水飲んでは吐くという行動を繰り返すケースでは、実は病気が隠されている恐れがあります。
その原因をしっかり見極め、考えられる病気を紹介します。
またあまりにも大量の水を愛犬が飲む場合も注意が必要となります。
犬は人間と比較した場合、とても吐きやすい動物です。
理由は四足動物だからです。
人間のように二足歩行の場合、胃が縦方向にあります。
これに対して四足歩行の犬の場合、胃が横向きとなるため、構造的に胃の中の物が逆流しやすく、すぐ吐いてしまうのです。
・食べ過ぎや早食いが原因で吐く
・ストレスが原因で吐く
・口の中や喉にケガなど異常があって吐く
・食物アレルギーが原因で吐く
・胃や腸の不調で吐く
・消化器官の炎症が原因で吐く
・ホルモン異常の関係で吐く
・誤飲誤食が原因で吐く
・草を食べて吐く
ざっと考えたところで、犬が吐く原因はこのようなところですが、水を飲んで吐くことを繰り返すような状態は、少し異常で気になりますね。
しっかり原因を追究して、病気の可能性も見極めていきましょう。
前述したように、通常元気なワンちゃんが吐く場合は、空腹の時間が長くなってしまったときや、食べ過ぎや早食いしてしまったようなケースです。
また、誤飲誤食で変なものを食べたり、胃がムカムカして、自分で草などを食べて意識的に吐くケースもあります。
しかし、「水を飲んで吐くこと」をしかも何回も繰り返す行為は明らかに異常と思われます。
犬が大量に水を飲むようになった場合、どのようなケースが考えられるか紹介します。
疑われる原因は、「泌尿器系の病気」や「ホルモン異常」です。
愛犬が「水をよく飲みおかしいなあ」と感じた場合は、24時間当たりの飲む量を量ってみることで、異常かどうかの判断が下せます。
病気だと疑う飲水量は、体重1kgあたり100mlを超える量だそうです。
このため、例えば体重3kgくらいの小型犬であれば、1日に飲む水の量が300ml以上を超える場合、病気を疑うべきとなります。
泌尿器系の病気では、腎不全、膀胱炎、結石などが考えられます。
泌尿器とは尿を作り出す臓器のことであり、腎臓・輸尿管・膀胱・尿道などを総称します。
体の中の老廃物を排出する仕組みは、肝臓で無毒化し、さらに腎臓によって濾過し、尿管から膀胱に流れていき、尿道を通って尿となって体外に排出されます。
ところがこれらの泌尿器のうち一つでも異常を起こせば、老廃物が無毒化されずに全身を巡ってしまいます。
そうなれば嘔吐や下痢を起こすなど体調が崩れてしまい、特に尿を作り出す臓器とされる腎臓の機能が落ちてくると、不必要なものを尿として排出することができなくなっていきます。
その結果、オシッコの量が増え、体の中の水分が減ってしまうため、ワンちゃんは水をたくさん飲むようになってしまいます。
ホルモンは通常、下垂体、甲状腺、上皮小体、副腎、すい臓などで作られます。
これらの臓器からホルモンを分泌することで、食べたものを消化吸収し、また体の調子を整えるなどの働きをします。
しかしホルモンが過剰分泌されてしまう、または反対に分泌されないなどの異常な状態が発生すると、犬は水を必要以上に大量に飲むという症状があらわれる場合がよく見られます。
さらに、症状が進行したケースでは、嘔吐や下痢、食欲低下、元気喪失、などの症状が生じてきます。
腎臓機能が著しく低下して、正常に尿が作れなくなる状態であり、高齢犬になれば注意が必要です。
腎臓は働きが、約7~8割衰えないと症状が現れないため早期発見が困難であり、さらに一度機能が壊れてしまえば、その機能を再生することができない臓器とされています。
そのため、健康診断により腎臓の状態を定期的にチェックすることが大切となります。
全身に老廃物や毒が回ってしまうために、大量に水を飲む、嘔吐、下痢、脱水、便秘、食欲低下などの症状が現れます。
時には貧血やけいれんなども生じ、放置すれば尿毒症の症状が出ることもあります。
腎炎は、腎臓に炎症が起こることで尿を作る機能に障害が出る病気であり、原因は、細菌感染、ウイルス感染、フィラリア症などが考えられます。
このため、尿が異常に濃くなったり、尿が上手く作り出せなくなり、その結果、老廃物や毒素を排泄できなくなります。
このため大量に水を飲むことが起こり、さらに嘔吐、下痢、食欲不振、脱水、アンモニア臭の口臭、発熱、腰痛などの多くの症状が出ます。
ところが無症状のことも多く、そのため症状が出てしまったときには、すでに症状がかなり進行しています。
治療が遅れてしまい、尿毒症の症状が出てしまっている場合はすでに末期の状態であり、治療が不可能なケースもあります。
泌尿器系の病気で比較的よく見られるのが膀胱炎です。
原因は細菌感染などにより、膀胱に炎症が起こることで発症します。
このため水を大量に飲み、尿の回数が増えますが、特徴として尿の一回の量が少ない、何度も排尿をしようと試みるがなかなか尿がでないという症状が起こります。
また、食欲不振、発熱、元気喪失などの症状が出て、進行させてしまうと腎炎になることもあり注意が必要です。
このような症状が思い当たったならば、尿検査をして原因を確認しましょう。
治療法は、抗生物質や抗菌剤などを投与しますが、再発し易い病気といわれています。
尿路結石とは、腎臓、輸尿管、膀胱、尿道などの尿を作ったり排泄するための器官に石ができて詰まってしまう病気です。
この病気の特徴は、激しい腹痛、発熱、血尿、嘔吐などであり、特に排尿の姿勢を取ってもなかなか尿がでないなどの症状が出ます。
治療が遅れて進行させれば、腎炎や膀胱炎などを併発する危険もあります。
結石ができにくいフードに変えることもおすすめです。
ホルモンの病気の一種であり、膵臓から分泌されるインスリンが不足する病気で、特に肥満犬は要注意です。
糖尿病とは血糖値が異常に上昇することで、その名の通り、余分な糖が尿に出てしまう病気です。
インスリンが不足してしまう原因は、遺伝的な体質による、またすい臓の病気やストレス、飲んでいる薬の副作用などが考えられますが、肥満もその要因となるため愛犬を太らせないことも大切です。
インスリンは膵臓から分泌され、食事で摂取した糖を吸収する働きがありますが、減少したり上手く働かなくなると、エネルギー源であるブドウ糖を筋肉などに取り込めなくなります。
糖尿病の主な症状は次の通りです。
甲状腺機能亢進症は、新陳代謝を調整する甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて起こります。
多くのケースで大量の水を飲み、嘔吐、下痢といった消化器系の異常が発生します。
さらに次のような問題行動が目立つようになります。
・落ち着きがなくなり、うろうろする
・興奮しやすくなる
・攻撃的になる
また、特徴としては、食欲がありよく食べるのに痩せていくことです。
さらに脱毛が起こったり、目が前に飛び出すなどの症状が出てきます。
この病気は腫瘍や遺伝的な体質、ストレスなどが原因と考えられており、悪性腫瘍(がん)が原因の場合では完治が望めないケースが多く、余命が短いことが多いといえます。
クッシング症候群は、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれます。
プードル、テリア系犬種に多くみられる病気とされ、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることが原因となります。
副腎皮質ホルモンとは、免疫作用、抗炎症作用、ストレスに対する作用、代謝に対する作用など重要な役割を果たすホルモンです。
症状は、大量に水を飲むようになり、過食、元気喪失といった症状が起こります。
この他にも皮膚が薄くなり、またお腹が垂れ下がるような症状も見られます。
なお、甲状腺機能低下症や糖尿病を併発する危険があるため注意しましょう。
アジソン病は副腎皮質機能低下症とも言われ、クッシング症とは反対に、副腎皮質ホルモンが不足する病気です。
かかりやすいとされる犬種は、プードルやコリーなどです。
クッシング症候群の治療薬を多く飲ませすぎることで、この病気になってしまうことがあります。
副腎皮質ホルモンが不足するため、水を大量に飲む症状が現れます。
さらに元気がなくなりぐったりする、フラフラして倒れる、食欲不振、下痢、嘔吐、痩せる、脱水、腹痛などの症状がでます。
犬が水を大量に飲む時は、当然ですが理由があります。
間違っても、愛犬が水を飲み過ぎるから吐いてしまうと勘違いしてはダメです。
体に異常が出ているからワンちゃんは、水を大量に欲して飲んでいるのです。
したがって絶対に「飲水量の制限」を行ってはいけません。
愛犬が水を欲するケースでは、まずは必ず「新鮮な水を好きなだけ飲めるように」する環境を整えてあげてください。
しかしこのまま放置しても、根本治療を行わない限りは、愛犬が「大量の水を必要とする状態」は変わりません。
このため愛犬が、水を飲んですぐ嘔吐するという行為を繰り返す場合、速攻で動物病院へ連れて行ってあげてください。
嘔吐を繰り返すことはとても危険で要注意です。
水を吐いているだけではなく、電解質など大切なものも大量に失ってしまいます。
また体力の消耗も激しくなるし、嘔吐物が気管や肺に逆流して炎症を起こす危険もあります。
最悪嘔吐物が気管に詰まって呼吸困難に陥る危険や脱水症状を起こす危険があります。
犬の健康において水の摂取量も重要であると認識してください。
なかなか水を与える量は分からないでしょうが、基本は犬がいつでも自由に飲める環境を整えてあげれば問題ありません。
あなただって喉が渇けば自然に水分補給を行うはずです。
同様に犬が好きなときに好きなだけ飲むスタイルを確保してあげれば良いのです。
ただし、水の摂取量にも気を配り、運動した後でもないのに盛んに水を飲んでおり、容器の水の減り具合が早い場合などは要注意となります。
また、犬は吐きやすい動物ですが、やはり吐いているときは何かの異常原因があってSOSを発信しているのです。
このため、特に水を飲んでは吐くことを繰り返すケースでは、病気を疑い早期発見のためにも早めに獣医師の受診を受けさせてあげましょう。