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ズーノーシス(人獣共通感染症)に注意!簡単に愛犬から病気が移る

犬から移る恐ろしい病気と言われて、みなさんが思い浮かべるのが狂犬病ではないでしょうか。

狂犬病は、犬に噛まれることなどによって発症する病気で、発症すれば助からないと言われる程恐ろしい病気です。

しかし現在狂犬病は、日本国内では撲滅されたと言われており、心配する人も少ないことでしょう。

あなたは、ズーノーシス(人獣共通感染症・動物由来感染症)って知っていますか?

ズーノーシスとは、人をはじめとして犬や猫などの動物も感染する病気のことです。

このため、犬や猫などのペットから人間が感染してしまう病気となり、日本には25種類ほどあるとされています。

主な犬などのペットから移るズーノーシスは以下の通りです。

病名 病原体 保有動物
狂犬病 狂犬病ウイルス 犬などすべての哺乳動物
レプトスピラ症 レプトスピラ菌 犬、ネズミ
パスツレラ症 パスツレラ菌 犬、猫、牛、豚他
回虫幼虫移行症 犬回虫・猫回虫他 犬、猫
皮膚真菌菌症 犬小胞子菌(真菌)他 犬、猫、ウサギ、ハムスター
カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症 カプノサイトファーガ菌 犬、猫
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症 ジフテリア菌の近縁菌 犬、猫、サル、リス他
犬ブルセラ症  ブルセラ菌
リステリア・モノサイトゲネス感染症 リステリア菌 犬、猫他
サルモネラ症 サルモネラ菌 犬、猫、家畜他
カンピロバクター症 カンピロバクター属菌 牛、鳥他
エルシニア・エンテロコリティカ感染症 グラム陰性通性嫌気性桿菌 犬、猫、豚
Q熱 コクシエラ菌 犬、猫、家畜
エキノコックス症 エキノコックス(多包条虫) キタキツネ、犬
SFTS(重傷熱性血小板減少症候群) SFTSウイルス マダニ、犬、猫
オウム病 オウム病クラミジア菌 鳥(セキセイインコ他)
猫ひっかき病 バルトネラ菌 猫、犬、ネコノミ
トキソプラズマ症 トキソプラズマ(原虫) 猫、豚

 

このようにいろいろな動物が菌を保有しており、病原体には、ウイルス、細菌、真菌、原虫、ぜん虫(線虫、条虫などの内部寄生虫)、節足動物(ノミ、ダニ、蚊など)などがあります。

感染経路は、感染源である動物から人へ直接うつる「直接伝播」と、ノミやダニなどの生物、土や水などの環境などが介在する「間接伝播」に分けられます。

 

このため現在日本は「空前のペットブーム」と言われたように、犬や猫などのペットと暮らすことは当たり前となっています。

飼い主にとってペットは家族の一員となり、癒やしを与えてくれるかけがえのない存在ともいえます。

そのため、ペットから移る感染症も急増しています。

平気で犬や猫とキスしたりする人も多いですね。

ペットに愛情を注いであげることは肝心ですが、その行為が病気に感染する危険性があることを知っておくべきです。

犬に噛まれてしまえばヤバイと感じる人は多そうですが、日常の何気ない行為にも多くの危険が潜んでいます。

例えば、口移しでエサを与えてしまう、自分の箸やスプーンなどからご飯を与えるような共有行為もリスクが高まりNGです。

ワンちゃんなどから移る感染症は、中には最悪死に至るケースすらある恐ろしい病気もあるため、これらの安易な行為は控えるべきでしょう。

犬たちペットの多くは、感染症の菌を保有していてもほぼ症状が出ないことが普通なので、うちのワンちゃんは病気などしていないから安心と思いこまないように注意しましょう。

もしかしてあなたが、ワンちゃんとキスした後などで、風邪っぽい症状が出ていれば、意外とズーノーシスになったものの、自然に治癒している可能性も高いですよ。

狂犬病などを除き、ほとんどのズーノーシスにはワクチンがないので、本当にこのようなキスなどの安易な行為は厳禁だと認識してください。

特に、免疫力が低い小さな子供に、愛犬とキスさせるようなことは絶対に止めさせてください。

 

噛まれたりひっかかれた傷でうつる病気

「狂犬病」

名前の通り、狂ったように暴れる攻撃的になった犬に噛まれてしまうと感染します。

感染すれば昏睡状態に陥り、2週間以内に死亡してしまう恐ろしい病気です。

発症する前に診断することはほぼ困難であり、事前にワクチンで予防しておくことが肝心となります。

日本は狂犬病清浄国とされていますが、世界に目を向ければまだまだ感染例があります。

そのため、狂犬病がまだ存在する国へ旅行に行く際には、事前に狂犬病ワクチンを摂取しておくと安心です。

 

「パスツレラ症」

主な感染経路は「経口感染」や「経皮感染」ですが、犬や猫に咬まれたりひっかかれたりすることでも感染する病気です。

2011年の報告例は約750例であり、10年間で10倍近く増えたとされています。

猫の場合、口内にほぼ100%菌を保有しており、犬でも約75%が保有するとされています。

受傷後、約30分~数時間後に激痛と発熱が起こり、患部が腫れてきます。

特徴は、精液のような臭いのする浸出液が出てくることです。

実は咬まれたりひっかかれたりしなくても、舐められることで口や鼻などの粘膜から感染し、気管支炎や肺炎などの呼吸器症状を引き起こすこともあるため注意が必要です。

糖尿病患者は特に要注意とされています。

また、高齢者など免疫力が低下していると重症化しやすく、めったに死亡することはありませんが、最悪敗血症を起こして死に至るケースもあると知っておきましょう。

 

「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症」

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は、犬や猫に咬まれたり、引っかかれたりすると移ることがあり、致死率は約30%と高く一時期騒がれて、週刊誌や新聞でも取り上げられたことがある病気なので、知っている方もいるのではないでしょうか。

この感染症は、次の3種類の細菌を原因とする病気です。

・カプノサイトファーガ・カニモルサス

・カプノサイトファーガ・カニス

・カプノサイトファーガ・サイノデグミ

 

発症率は低いと言われていますが、高齢者などの免疫や体力の弱い方は注意が必要です。

これらの菌は、犬や猫の口内に潜む細菌であり、8割前後と高い確率で常在しています。

潜伏期間は短くて1日、長くても2週間程度とされています。

先ずは倦怠感が出て、引き続き腹痛や吐き気、頭痛、発熱などの症状が出ます。

重症化することも多く、敗血症や多臓器不全、髄膜炎などを引き起こしてしまうと死に至るケースも多いです。

日本では、1993年〜2017年の間に93例の発症例が報告されており、そのうち19例が死亡しています。

患者の95%が40歳以上の方が占めており、なぜか男性が7割近くを占めています。

世界全体で見た場合、発症例は約500例が報告されています。

 

「猫ひっかき病」

名前の通り、おもに猫にひっかかれたり咬まれたりすることで感染します。

何か思わず笑ってしまいそうなユニークな病名ですが、ちなみに犬から感染しても猫ひっかき病と言います。

病原体は猫の体にいることが多いバルトネラ菌です。

ノミが媒介するため、猫との接触がないケースでも、ノミに刺されて感染することもあり注意が必要です。

潜伏期間は数日から2週間程度であり、傷口に丘疹や膿疱が見られ、発熱することもあります。

ずきずきとした痛みを伴い、リンパ節が腫脹するのが特徴です。

傷口が治癒したケースでも、菌が残っていると1年以上経過した後にリンパ節の腫脹が再発することもあります。

18歳以下の若年層に発症が多いのが特徴の一つです。

子猫にじゃれつかれることからの感染が多いとされています。

犬や猫に噛みつかれたり、引っ掻かれたケースで、腫れや痛みがある場合は、安易に考えずにきちんと病院で、治療と検査を受けるのがおすすめです。

 

飛沫感染

「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」

犬が風邪のような症状が出ていたり、目ヤニや皮膚の化膿が見られる状態で、くしゃみや鼻水などが、犬から人間にかかってしまうと感染します。

2016年5月に福岡県の60代女性が呼吸困難に陥り、3日後にコリネバクテリウム・ウルセランス感染症で死亡したことがニュースとなりました。

このように、最悪死に至ることもある怖い感染症です。

 

ペットの糞尿を介して体内に入って移る病気
・Q熱

・レプトスピラ症

・犬ブルセラ症

・リステリア症

・サルモネラ症

・カンピロバクター症

・エルシニア

・エンテロコリティカ感染症

・回虫幼虫移行症

・エキノコックス症

・オウム病

「Q熱」

Q熱は、医師に見過ごされがちな病気とされ、そのため長い間原因不明とされていました。

そのため、病名が「Query fever(不明な熱)」Q熱と呼ばれたのです。

現在では原因は「コクシエラ菌」に感染することと判明していますが、犬や猫が感染してもほぼ無症状なのが特徴です。

犬で約10%、猫で約15%が菌を保有するとされています。

症状には急性型と慢性型があります。

急性型の潜伏期間は、10~30日です。

発熱や頭痛などインフルエンザに似たような症状が現れます。

慢性型の場合、急性期の症状の後に長引く微熱や全身の倦怠感が続きます。

また関節痛や筋肉痛などもあり、最終的には慢性肝炎、心内膜炎などを引き起こしてしまいます。

主な感染経路は、「空気感染」や「経口感染」です。

 

「レプトスピラ症」

レプトスピラ症に犬が感染すると、歯ぐきなど体の各箇所から出血が見られます。

また、黄疸が発生のするのも特徴の一つであり、その他発熱・嘔吐・下痢などの症状が起こったりします。

感染源はオシッコであり、愛犬の尿に触れることで人に感染します。

人間が感染した場合の症状は、主に発熱や頭痛、筋肉痛などです。

なお、重症になると黄疸や出血、腎不全などを起こし死亡するケースもあります。

 

「オウム病」

鳥から感染するオウム病は、鳥が「オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)」という細菌に感染することで発症する人獣共通感染症です。

名前が示す通り、オウムやインコなどが保菌率が高いですが、野生の土鳩なども菌を保有しています。

鳥が感染すると無症状な場合もありますが、多くは「食欲不振」「下痢」「鼻水」「呼吸困難」を起こし、元気がなくなり、羽毛が逆立ったりして、そのまま放置すると1〜2週間程度で死亡してしまいます。

人間が感染した場合は、潜伏期間は感染から4~15日程度であり、38℃以上の発熱や倦怠、咳、痰などの症状が見られ、インフルエンザに似た症状を起こします。

このため、インフルエンザに間違われやすく、年間約300~3,000人が発症するとされています。

したがって、飼っていた鳥が死んだ直後にインフルエンザのような症状が出たときには、その旨を必ず医師に伝えることが大切となります。

なお感染原因は鳥の糞です。

オウム病の菌であるクラミジアは、鳥の糞の中に多く含まれるため、糞が乾燥して空気中に舞い散った状態となり、それを人間が吸い込むことで感染します。

 

ズーノーシス(人獣共通感染症)の対策

今回各種のズーノーシスを紹介しましたが、ペットとの接し方に不安を感じた方も多いかもしれませんね。

しかしペットから移る病気についての正しい知識を身につけることがとても大切なのです。

なお必要以上に不安がることはありません。

ズーノーシスに感染してしまうような、危険な行為をしっかり把握して防止すればよいのです。

まず守っていただきたいことが、「ペットとのキスや食べ物の口移しなどをしない」ことです。

これは飼い主さんが注意すれば守れる事柄です。

次にワンちゃんはすぐにあなたを舐めてくるでしょうが、傷口や口、目、鼻など菌が体内に侵入する可能性がある箇所は舐めさせないように注意してください。

犬や猫と触れ合った後は、手洗いを徹底することが大事です。

また可能な限り、噛みつかれることや引っかかれることを避けるべきですが、万一、噛まれたり引っ掻かれたりした場合は、傷口を石鹸を用いてよく洗い流しましょう。

なお当然ですが、ワンちゃんにきちんとワクチン接種を行い、定期検診を受けて健康を維持することが大切な対策となります。

さらに、トイレをこまめに掃除するなど、飼育環境を清潔に保つことも感染源を除去することに繋がります。

riasu

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