狂犬病って当然みなさん聞いたことがあるはずです。
ただし、日本においては現在狂犬病は根絶したと考えられているため、今一ピンとこないかも知れませんね。
しかし日本で犬を飼う場合、「狂犬病予防法」(昭和25年法律第247号)が定められており、生後91日以上のワンちゃんを所有した場合、必ず30日以内に市町村に愛犬の登録を行い、さらに狂犬病の予防接種を受けないといけない決まりになっています。
そしてこれが守られていない犬は、捕獲・抑留の対象となり、飼い主や所有者に対して20万円以下の罰金が科されます。
何故これほど厳しい罰則があるかというと、狂犬病は発症するとほぼ100%の確率で死亡するという、致死率100%の恐ろしい病気だからです。
海外では毎年のように狂犬病が発症し、WHO(世界保健機関)の報告によると、何と毎年世界では約6万人もの人たちが狂犬病により死亡しているのです。
日本で生活するみなさんにとって狂犬病はさほど身近なものではなく、イメージは毎年ワクチン接種をうつ程度かもしれません。
しかし、狂犬病が発症していないとされる地域は日本をはじめとして、北欧やイギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどのごく一部の地域のみなのです。
したがって、対岸の火事などと呑気に考えているのは大間違いであり、いつ日本に狂犬病が他国から侵入してきても何ら不思議ではないのです。
今回はこのような恐ろしい病気の狂犬病について、症状や感染源などを紹介します。
日本では、1950年以前においては多くの野良犬が町中に溢れており、狂犬病に感染している犬も多かったため、そのような野犬に噛まれて多くの人が狂犬病を発症してしまい、死亡者がたくさんでていたそうです。
このため、1950年に狂犬病予防法が制定され、犬の登録や予防接種が実施され、同時に野良犬の抑留が徹底して行われました。
その結果、日本では1956年(昭和31年)以降、人の狂犬病の発生は起こっておらず、現在日本は、狂犬病が根絶したとされています。
ただし海外旅行に行った人が、外国で野犬や野生動物に噛まれて狂犬病を発症するケースがあります。
日本人は狂犬病の恐ろしさが身に染みていないため、つい無造作に野犬や野生動物に近づき、噛まれてしまう事故が生じやすいです。
狂犬病は万一発症してしまえば、致死率100%の恐ろしい病気だと頭に叩き込んでおきましょう。
人が狂犬病に感染した場合、発症するまでの潜伏期間は約2週間~80日間程度といわれています。
したがって犬に噛まれた場合、この潜伏期間中に適切な処置を行い、発症を防ぐことで命を救うことが可能となります。
狂犬病の初期症状は、熱や咳、頭痛、嘔吐などの風邪に似たような症状から始まります。
そして噛まれた部分に違和感を感じるようになるのが特徴です。
噛まれた傷口から入ったウイルスが、体の細胞を壊していき、高熱が出ます。
さらに症状が進み、治りかけたと思えた傷口が再び痛み出したころには、体に麻痺が生じたり、気分もイライラして不安な憂鬱な状態となり、「恐水症」や「恐風症」と呼ばれる症状が出てきます。
狂犬病は別名を狂水症と呼ばれます。
この理由は、水を怖がるようになるからです。
喉がとても渇くため水を飲むのですが、そうすると喉が痙攣し苦しくなったり、激しい痛みが起きたりします。
狂犬病は神経が過敏になることもあり、水を見ただけでも恐怖心が生まれ、体が痙攣したりしてしまいます。
このため水が異常に怖くなり、飲むことができなくなり、脱水症状にまでなってしまいます。
狂犬病になると神経が過敏になって五感が異常に感じやすくなり、水だけでなく音や風なども怖がるようになり、恐風症と呼ばれる状態が生じてしまいます。
それこそ顔に風が当たっただけで、殴られたように感じ痙攣が起きてしまったり、何でもないような音が異常に大きく聞こえて恐怖心をあおります。
さらにこのような状態が進行して末期状態となると、精神錯乱が起こり幻覚まで見え出すそうです。
ここまで重篤化してしまうと、激しい痙攣発作などが起こりだし、脳や全身の筋肉が麻痺してしまいます。
最後には呼吸不全を起こして死亡してしまいます。
犬が狂犬病に感染した場合、潜伏期間は2週間~2ヶ月程度とされています。
このため、犬が噛まれた時には何ともない状態であったとしても、数週間や数ヶ月経過後に突然発症するというケースで起こり、一旦発症してしまえば手遅れであり、有効な治療法はないため100%死に至ります。
症状は前駆期、狂躁期、麻痺期の3段階に分かれます。
前駆期とは、狂犬病の初期症状です。
はじめは瞳孔が大きくなったりして、不安な動作が増え、食欲不振や元気が無くなります。
目につく変化は、愛犬の性格が変化してしまう、また謎の異常な行動が起こります。
普段大人しくお利巧なワンちゃんが、急に飼い主に対して反抗的になってゆうことを聞かなくなる。
また反対に、いつもなら飼い主さんに反抗するような問題児のワンちゃんが素直になって、大人しくなったりします。
遠吠えや徘徊などという通常今まで見られなかった、異常な行動をしだすこともよくあります。
狂躁期は犬が常に興奮状態となり、凶暴性が増し攻撃的となるため、噛まれてしまえば狂犬病に感染するため、とても危険な状態です。
無意味な遠吠えや徘徊が目立ち、不眠症状になったり、脱水症状が見られます。
水を恐れ、飲みたくてもうまく飲めなくなります。
また、石や土など、今までであれば口にしなかったような物を食べたりし、よく吐きます。
光やちょっとした物音などに異常に反応します。
目の前にある物に見境なくむやみに噛み付くようになります。
狂躁期にみられた噛み付き行動がなくなります。
足腰が弱くなり平衡感覚がなくなるため、フラフラとしか歩けず、そのうち全身が麻痺し出し、ぐったりと倒れ込んでしまってもう動けなくなります。
口の麻痺も起こるため、下顎に力が入らず舌が出っぱなしになり、大量のヨダレを垂らし、意識も低下していき昏睡状態になります。
最終的には呼吸困難を引き起こして死亡します。
狂犬病を引き起こす狂犬病ウイルスは、狂犬病ウイルスを持っている動物の唾液に、高濃度に濃縮された状態で含まれています。
このため、そのような犬などの動物に噛まれることで、狂犬病に感染してしまいます。
狂犬病ウイルスは、人から別の人に感染したという実例報告はないため、狂犬病にかかっている動物に噛まれなければ感染しません。
狂犬病というとつい犬にさえ注意すればよいように思いがちですが、アジアでは特に犬が一番多く発症するため、この名前がついているだけであり、哺乳類であれば種類に関係なく感染します。
このため、猫などにも注意が必要となります。
南米では、犬よりも吸血コウモリからの感染源が主となっており、この他にもキツネ、スカンク、リス、アライグマ、オオカミなど様々な動物から感染します。
日本では現在狂犬病は根絶していますが、アジア・アフリカなどはとても感染が多く、外国旅行に行った際には、野良犬や野生動物に無暗にエサを与えたりして近づかないことがとても大切です。
日本人は狂犬病の恐ろしさの認識が欠けているため警戒心がとても薄れており、安易に動物に近づく傾向があると指摘されています。
狂犬病は発症してしまうとほぼ100%の確率で死亡してしまうという、とても恐ろしい病気であることを肝に銘じてください。
狂犬病は発症してしまうと有効な治療方法はなく、100%死に至ってしまう恐ろしい病気です。
日本の場合、狂犬病は根絶しているためさほど心配ありませんが、海外旅行などで現地の野犬などに噛まれた場合は一大事です。
現に、フィリピンで野良犬に噛まれた人が帰国後、狂犬病が発症したという事例も起こっています。
このため海外で動物に噛まれたケースでは、まずは慌てずに応急処置を行ってください。
噛まれた場合に行う応急処置は、傷口を水と石鹸でよく洗い流すことです。
その後消毒もしておきましょう。
次に仮にツアー旅行であれば、主催者にすぐに電話をして処置をお願いし、適切な医療機関に連れて行ってもらいワクチンを接種しましょう。
慌てず迅速な対応が求められます。
狂犬病は発症すれば命取りなので、それこそその際の適切な対応が生死の分かれ目と言っても過言ではありません。
狂犬病は潜伏期間があるため、その間に適切な治療を行い、発症を防げば命を救うことが可能です。
治療法は、できる限り至急にワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリンを投与することです。
問題の一つが、狂犬病が発症しない日本では、ガンマグロブリンが入手不可能なことです。
WHOの発表では、ワクチンの初回摂取開始日を0日と定め、その後残り5回(3、7、14、30、90日)で計6回の摂取が推奨されており、この処置で発症リスクをほぼ抑えられるとしています。
帰国後には、検疫所(健康相談所)へ申し出ておくようにしましょう。
狂犬病の治療は紹介したとおりかなり大変です。
万一に備え、海外を訪れる際には、事前に狂犬病の予防注射をしておくことがおすすめです。
これで狂犬病を未然に防ぐことが可能となります。
また、規則で定められていますが、犬を飼った場合は、絶対に狂犬病の予防注射を行うようにしてください。
狂犬病の予防接種を事前に行うことを「暴露前免疫」と言います。
免疫力をつけるのですが、そう簡単には完了しません。
4週間間隔で2回の皮下注射が必要であり、さらに追加として、6~12ヶ月後の間にまた注射しなくてはいけません。
したがって、海外旅行が確定した段階で直ぐに対応しないと間に合いません。
なお1回あたりの費用は病院により異なりますが、1,3000円程度です。
あなたの命代と考えれば安いと思いますよ。