人間の通常の歯の噛み合わせは、上の歯が前に出た状態となります。
犬の場合も同様であり、この形を鋏状咬合(はさみじょうこうごう)と言い、別名シザーズバイトと呼ばれています。
ほとんどの犬種においてこの鋏状咬合が正常といえますが、中には不正咬合と呼ばれる歯の嚙み合わせが良くないワンちゃんもいます。
あなたの愛犬をチェックしてみましょう。
あれ何か歯の生え方がおかしいなんて感じたりしてませんよね。
犬の歯の噛み合わせの形は、大きく分けて4種類あります。
今回はこの4つの中からアンダーショットをとりあげ、原因や治療法などについて見ていきましょう。
シザーズ・バイトが犬の噛み合わせの標準タイプであり、ほとんどの犬種の正しい噛み合わせ見本とされています。
上の前歯の裏面に、きちんと下の前歯の表面が接触し、細かく言えば、上の前歯が下の前歯より少しだけ前に出ている状態となります。
上下の門歯の先端がズレずにぴったりと噛みあいます。
簡単に分かりやすく言えば「出っ歯」です。
下顎より上顎が長いために、上の前歯が正常な位置より前に出ています。
このため、上下の門歯の間に隙間ができた状態をさします。
「受け口」「しゃくれ」と言えば分かりやすいかも知れませんね。
アンダーショットという言葉は、聞いたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか?
ペットショップに行くと、よく犬の特徴の説明文の中にアンダーという言葉が明記されているはずです。
上顎よりも下顎が長いため、口を閉じたときに下の前歯が上の前歯の前に出ている状態です。
実はアンダーショットがスタンダードの犬種もいます。
その代表がブルドッグです。
ブルドッグは、通常だと上手く口が閉じない程の強いアンダーショットであり、優に1cm以上も平気で出ているほどです。
今度ブルドッグを見る時には、注意して口を見れば下あごが突き出たアンダーショットだと一目で分かるはずです。
その他には、以下のような短吻種(たんぷんしゅ)の犬種が該当します。
・ペキニーズ
・パグ
・ボストンテリア
・フレンチブルドッグ
・ボクサー
上記のようにいわゆる「鼻ぺちゃ犬」達のワンちゃんたちが、アンダーショットがスタンダードとされています。
ブルドッグほど目立ちませんが、よく見てみれば確かにちょっと受け口だと分かるはずです。
フレンチブルドッグの場合などは、以下の通り細かく規定されています。
・下の切歯(前歯)は、絶対に上の切歯(前歯)より内側にきてはいけない。
・顎は側方に逸脱したり、ねじれたりしない。
・上唇と下唇が完全に歯を覆う形で結び合うこと。
アンダーショットになっている犬種の場合、ブルドッグの血が入っていることが原因となっていることが多いです。
土佐闘犬などにもアンダーショットが見られるのは、薄いながらもブルドッグの血が混じっているためです。
ワンちゃんがアンダーショットになる原因は、遺伝が大きく影響しています。
親犬が不正咬合である場合、そのDNAを受け継ぐため、子犬にも不正咬合である傾向が高まります。
ブルドッグやボクサーなどの犬種は、アンダーショットの噛み合わせが正しいとされる犬種標準とされています。
また、授乳中の状態等によっては、上顎と下顎で成長の度合いが変わることもあるとされています。
通常のケースであれば、乳歯は成長と共に抜け落ちます。
ところが稀に乳歯が抜けずに残る乳歯遺残となる場合があります。
チワワなどのような小型犬などは、乳歯遺残となりやすい傾向があり注意が必要です。
乳歯遺残を放置してしまうと、仮に上下の顎の骨は正常であっても、乳歯が残ったままの状態のため永久歯の成長を邪魔してしまい、歯並びが通常の形とは異なってしまうクロスバイトという
状態になり、アンダーショットになってしています。
また、嚙み合わせが正常でなくなるために、犬がアンダーショットになってしまう場合もあります。
外傷を受けた場合にも、ワンちゃんが不正咬合になる可能性があります。
・子犬のときに顎を骨折や脱臼した
・交通事故に遭って顔を損傷した
このような外傷が原因で歯の成長が邪魔されてしまい、バランスの悪い歯並びや顎の変形を起こしてしまうことから、不正咬合になる場合もあります。
また、このような外傷を負うことで、血液循環に伴う供給のバランス状態が悪くなり、左右の歯の成長に影響を与え、不正咬合になる場合もあります。
人間は人工的に犬に改良を加え繁殖させ、様々な犬種を作り出してきています。
ブルドッグやボクサー、パグなどは、正式にアンダーショットが犬種として認められているケースがあります。
これがどういう意味なのかと言えば、つまり、アンダーショット同士の犬を交配させ続けることで、必ずアンダーショットの子犬が生まれてくるように、人間が作為的に繁殖を続けた結果なわけです。
このような理由から、アンダーショットがスタンダードとされる犬種もいるわけです。
したがって、アンダーショットが標準とされる犬種以外の場合、遺伝や外傷が原因である可能性が高いと言えます。
わざわざアンダーショットの犬を作ったりしていますが、実は欠点とされる問題点があります。
アンダーショットで問題が生じるかどうかの分岐点がズレ幅であり、5mm以内の場合は、アンダーショットでも生活に支障はないとされ特に問題はありません。
上下の歯のズレが5mm以上ずれているケースでは、犬の歯の噛み合わせ状態としては問題が生じてきます。
上下の歯のズレが大きいために、犬歯が歯ぐきや口内の粘膜に当たったり、突き刺さる可能性もあります。
そのため、口の中が傷つくことがあるのです。
アンダーショットのせいで、慢性的に口に傷がある状態になると健康に支障が生じ、細菌に感染するなどの健康上の問題も出てきます。
エサを食べる際に食べにくくて支障が生じる場合があります。
うっかりすると、食事の度に口の中を傷つけてしまいます。
場合によっては、エサを食べる食器や、水を飲むときの器に工夫が必要になってくることもあります。
ズレた状態が5mm以内のアンダーショットであれば、さほど見た目に影響は与えません。
ただし、それ以上のズレとなると、どうしても見た目にもはっきりとわかってしまいます。
いわゆるかなりの「しゃくれ」の状態になります。
見た目が目立ち気になってしまうような、特徴的な外見になってしまいます。
ドッグショーなどに出場した場合、欠点とみなされてしまうケースもあります。
実は、イングリッシュ・コッカースパニエル、セントバーナード、ロットワイラー、コーギー、コリー、シュナウザーなどの犬種は、アンダーショットだと大きな欠点とされてしまうのです。
でも普通であれば、あなたの愛犬をドッグショーに出したりしませんよね。
ようは実際のところ、あなたが見た目を気にするかどうか次第でしょう。
我が家では以前ミニチュアシュナウザー(メス)のキャンディーを飼っていました。
キャンディーは未熟児で生まれ、そのため売り物にならず、娘の同級生の獣医師さんから譲っていただきました。
正直ちょっと顔も歪んでいました。
でもとっても人懐っこくて、最高に明るく素敵な子でした。
実は未熟児で一番ひ弱に生まれたのに、他にもらわれた兄弟中で最も長生きしたんですよ。
だから少しくらいアンダーショットがあっても、素敵なワンちゃんはいくらでもおり、見た目なんてさほど関係なく思いますね。
アンダーショットの犬の問題の一つが、歯垢がつきやすい点です。
標準的な噛み合わせの良いワンちゃんに比べて、人間と同様に歯並びが悪いと、どうしても歯磨きが難しくなり、歯垢がつきやくなっています。
そのため、オーラルケアに気をつけてあげる必要があります。
ワンちゃんの場合、人間のように何年ものあいだ矯正器具をつけて歯列矯正治療するなどということは出来ません。
そのため治療方法は、通常は抜歯や歯の切断などの外科的措置となります。
人間でも親知らずを抜くのは結構大変だったりしますが、ワンちゃんの場合は、全身麻酔を行うこととなりかなりのリスクが伴い、簡単にはできません。
特に、下あごの犬歯を抜く場合にリスクが高まり、下顎骨折という危険性が伴うのです。
そのため、見た目を良くするなどの理由で治療を行うべきではありません。
あくまでもズレが大きいため、口の中を傷つけてしまうとか、歯周病を起こしたりする可能性があるケースが対象となります。
また最近では、一部の動物病院においては人間と同様に、抜歯した歯の両隣の健康な歯の間に、橋(ブリッジ)をかけて義歯をはめ込む、ブリッジ治療を行っている所もあるそうです。