あなたは「カーミングシグナル」という言葉を知っていますか?
カーミングシグナルとは、犬に生まれつき備わった非音声的言語とされています。
つまり分かりやすくいえば、犬の行動やしぐさには必ず意味があり、それが言葉の役割を果たすということです。
昔は「カットオフ・シグナル」という言葉が使われていました。
これは、ワンちゃんの祖先にあたる、オオカミのボディランゲージの研究において使われた言葉であり、相手の攻撃性を断ち切るシグナルという意味で使われました。
しかし犬の場合は、攻撃性を断ち切るのではなく、不要な争いを避けるために、自分の立場や感情を相手に伝えて、攻撃を仕掛けようとしている相手を落ち着かせるためのシグナルといえます。
このため、「Calming」は「落ち着かせる」、「Signal」は「信号」という意味のため、こちらの方がふさわしいと考えられ、「カーミングシグナル」と呼ばれるようになりました。
これは、ノルウェーの動物学者として著名なTurid Rugaas(トゥーリッド・ルーガス)氏によって提唱された言葉です。
このため、ワンちゃんの何気なく感じるような行動にも、不安や興奮などの意味が伴って隠されているケースがあるのです。
現在約30個ほどのカーミングシグナルの種類が確認されています。
したがって、愛犬の気持ちを読み取るためには、それらのシグナルを理解することがとても大切となります。
ここで注目してもらいたいことがあります。
カーミングシグナルは、本来犬同士のコミュニケーションの手段ですが、愛犬は人間に対してもこのカーミングシグナルを発信するということです。
例えばチワワが、嫌なことを飼い主さんからされた場合、「もういい加減に止めてよ」と仕草でサインを送っているのです。
つまり、カーミングシグナルを理解できれば、犬と人とのコミュニケーションの手段となり得るわけです。
ルーガス氏の例えで、もしも人間が犬語とされるカーミングシグナルを使った場合、ワンちゃんがどれほどビックリするかを表現した言葉が以下の通りです。
「それは密林に迷い込み、長くさ迷い歩き、絶望の淵に立ったときに、突如母国語を耳にしたくらいの驚きである」と述べています。
本来であれば、人間と犬はお互いの言葉が分かりません、しかし非音声的言語である「カーミングシグナル」をマスターすれば、互いに意志が通じ合い、会話が交わせるかも知れないのです。
会話など人間とは交わせないと思っていたワンちゃんが、もしも飼い主さんがカーミングシグナルを使ってあげれば、先ほど述べたルーガス氏の例えのような気持に愛犬はなるのかも知れませんよ。
このためにも、今回主なカーミングシグナルの意味を紹介するので、しっかり理解してもらいたいと思います。
これで、あなたが愛犬に対して良いつもりで行っていた行動が、かえって反感をかってしまっていたことにも気づけますよ。
実際に飼い主さんが誤解して意味を受け取っているカーミングシグナルがいくつもあるのです。
最初に誤解されやすいシグナルを2つほど紹介しておきましょう。
愛犬が飼い主さんにお腹を見せるのが「服従のサイン」だと勘違いしている人が多いはずです。
だって本などにそう書いてあるからです。
確かに信頼している相手にしか見せないでしょうが、愛犬がお腹を見せるというサインは、相手に「落ち着いて」と呼びかけている意味が強いのです。
ワンちゃんがしつこく他のワンちゃんに追いかけられると、お腹を見せることがあります。
これは相手に服従しているわけではなく、「落ち着いて」と相手に言って、その行動を止めさせようとしているのです。
それでも相手が止めないと、ケンカになったりします。
相手に服従していれば、ケンカにはならないはずですよね。
ということで、飼い主が撫でたりしていると、直ぐお腹を見せるケースでは、もうそれ以上構わないでと言っている可能性が高いのです。
ワンちゃんは飼い主さんに構ってもらうことは大好きで、撫でてあげるのは大切なコミュニケーションですが、度を超すと愛犬は嫌がってしまうケースもあるのです。
眠たいなと思っている時に、必要以上に繰り返して触られれば嫌になってしまい、お腹を見せて、もうそろそろ止めてよと訴えているわけです。
絶対にやめてもらいたい間違ったしつけが、愛犬を仰向けにして押さえつけるしつけ方法です。
こうすることで、飼い主への服従心が生まれ主従関係が構築できると言っていたりしますが、これは完全な間違いで、間違ったしつけ方法であり、かえってマイナス効果となってしまいます。
あと良いと言われている仰向け抱っこがあります。
これも、この抱っこを行うことで、飼い主への服従心を芽生えさせることができるとされており、安心感を与えるリラックスポジションと言われたりしています。
しかし私は疑問を感じています。
実際にリラックスポジションであれば、ワンちゃんが嫌がることはないはずですが、初めて行えば必ずというほどワンちゃんは嫌がって暴れますね。
仰向け抱っこを奨励している意見が多いようですが、調べてみると反対意見もあります。
私も仰向け抱っこには反対です。
チワワを頭や顔などを撫でていてあげると、よく欠伸や目を細めるリラックスポーズを取ります。
今の言葉を聞いていて、多くの方は何の疑問も生まれないはずです。
それはあなたが、愛犬が欠伸したり目を細めたりする動作が、リラックスしていると勘違いしているからです。
愛犬とコミュニケーションをとるために撫でてあげることはとても大事ですが、こちらから強制的に行ったり、しつこくするのはNGです。
実は多くのワンちゃんは、必要以上にしつこく撫でられることを好みません。
飼い主さんは、一生懸命にコミュニケーションを取って可愛がってあげているつもりなのですが、度を超せばかえって愛犬は嫌がりストレスを感じてしまうことさえあるのです。
ここで愛犬が嫌がっていないかどうかを判断する目安が、カーミングシグナルである欠伸や目を細めたりする仕草です。
このサインが生じれば嫌がっており、もうそろそろ止めてよということなのです。
しかし、多くの飼い主さんは、愛犬が欠伸や目を細めれば、リラックスしていると勘違いして、ますます撫でてあげてしまっているのです。
このようにしっかりカーミングシグナルの意味を理解していないと、愛犬のサインを勘違いして、反対の行動を行ってしまっているケースがあると知っておきましょう。
この意味からも、カーミングシグナルの意味を理解することが、とても大切であることが認識できたことでしょう。
それではワンちゃんが、撫でられるのにストレスを感じて、盛んにあくびを連発してサインを送り、もういい加減止めてと訴えている動画を見てみましょう。
犬はあくびを眠いとき以外にも、カーミングシグナルとして行います。
ストレスを軽減しようとする行為であり、その意味は、嫌なことを止めてほしいとなります。
・これ以上叱らないでほしい
・飼い主さんに落ち着いてほしい
こんな時にあくびをします。
敵意がないことなどを相手に伝えていますが、先ほど紹介したように、決して服従しているわけではありません。
相手に「落ち着いて」と呼びかけている意味が強いのです。
相反する2つの意味があります。
一つ目は、犬同士が認め合ったときなど、 愛情のサインとして行います。
二つ目は、他の犬や見知らぬ人に会ったケースで、緊張しているときや嫌いなことをされたときなどに、「私に注目しないで」などと訴えて行います。
犬は体をかく動作を体の痒み以外にも、カーミングシグナルとして行います。
飼い主さんに叱られた時などに、相手の気をそらす意味合いや、もういい加減にしてという気持ちで行います。
また、緊張状態から解放された時など、「リラックスしている」という意味で行います。
相手に対して敵意がないことを伝えるサインです。
また、私にストレスをかけないでと訴えている意味もあります。
緊張を和らげストレスを軽減しようとしています。
また、相手からのメッセージを待つ意味合いもあります。
自分を落ち着かせようとしたり、相手に敵意がないことを伝えています。
このため、飼い主に叱られているケースなどの、不安やストレスを感じる時によく行います。
食事の前後に行うのは、カーミングシグナルではありません。
尻尾を振るカーミングシグナルは、振り方で意味が異なるため注意が必要です。
通常は好意的な意味を持つと理解しておけば問題ありません。
こまかく言えば、体の右側でしっぽを振っているケースでは、喜びや親しみを感じているときだそうです。
反対に、体の左側でしっぽを振っているケースでは、不安や恐怖を感じているときだそうです。
さらに、高くしっぽを上げている時は自信満々な証拠であり、相手への威嚇や警戒、攻撃性を表します。
また反対に、しっぽを低く垂らしたり、そのしっぽを後ろ足で挟み込むケースでは、強い恐怖心を抱いていて、自信がない証拠です。
関連記事:「チワワがしっぽを振るのはなぜ?その理由やいろんな仕草の意味」
座る・伏せるは、単純に疲れていたり、特別意味がない行動でもあるため見落とされがちですが、興奮している相手の犬の前で行う場合、自分の気持ちを落ち着かせたり、相手を落ち着かせようとする意味があります。
この行動により落ち着きが取り戻せて、ケンカに発展しないことも多いのです。
地面のニオイを嗅ぐ行動は、自分の興奮や不安な気持ちを落ち着かせるためにすることがあります。
ワンちゃんが、初めての場所や慣れない環境において、盛んに地面のニオイを嗅ぐ場合は、ニオイの確認行為以外にも、緊張している可能性があります。
このようなケースでは、少しで愛犬が落ち着けるような環境を整えてあげる対処が必要です。
相手を刺激しないようにする場合の近付き方です。
ワンちゃん自身が警戒している場合や、相手が緊張しているケースで見られる行動です。
犬が不安から落ち着こうとするケースで身震いします。
またストレスからの解放後にも行います。
このため、ケンカの後や、過度に体を撫で回された後などでもよく行います。
なお、雨などで体が濡れた時や、気温が寒いときに体をブルブルと震えさせることがありますが、このような身震いは生理的現象です。
アレルギーなどの痒みが原因ではなく、自分の足を噛んでいる場合、恐怖や緊張を感じており、何かしらのストレスを感じているケースです。
ストレスの原因を調べて取り除いてあげましょう。
ワンちゃんが飼い主さんに背中を見せるのは、何らかの事情で興奮しているときです。
興奮原因が分かれば取り除いてあげてください。
分からない場合は、とにかく優しく接してあげましょう。
また、飼い主さんに落ち着いてほしいケースでも、背中を見せることがあります。
鼻の刺激からくしゃみをするのではなく、「わざと」くしゃみを行って、ストレスを軽減したり、相手の興奮をしずめようとします。
犬が歯をガチガチ鳴らすのは、怯えているわけではなく、相手との不要なトラブルを避けようとしているサインです。
これで相手の犬に対して落ち着かそうとしているのです。
また、歯周病などのために、歯を鳴らしているケースもあるため注意しましょう。
草むらを走り回っていた愛犬がいきなり立ち止まり、前足を空中に挙げたまま静止してしまうことがあります。
これは、興奮や緊張を抑えようとしているカーミングシグナルです。
草むらで止まったケースでは、多分バッタなどの昆虫でも見つけたのでしょう。
これを「ポインティング姿勢」と呼び、狩猟本能を落ち着けるために行っているのです。
なお、愛犬が片足を上げて飼い主さんにタッチしてくることがよくあります。
これは単純に、大抵何かを要求しているサインです。